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2016-09-23

ノーベル賞の日本人有力候補は全てがんの研究者

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今年のノーベル賞で有力候補とされている日本人3名は、いずれもがんの研究者です。その研究対象にはがんを制圧する上での課題が表れています。

PD-1を発見した本庶佑氏らがノーベル賞候補に
米国の調査会社であるトムソン・ロイターは今年度のノーベル自然科学3賞、経済学賞の有力候補として24名を選出しました。日本からは生理学・医学賞の候補として本庶佑京都大学名誉教授、化学賞の候補として前田浩熊本大学名誉教授と松村保広国立がん研究センター先端医療開発センター新薬開発分野長の名前が挙がっています。本庶氏は、がん細胞が免疫細胞を抑制する際にポイントとなる蛋白質「PD-1」の発見で知られていますが、このPD-1に作用して、免疫細胞を正常に機能させるのが免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」です。前田氏と松村氏はがん細胞だけに薬を送り込む「ドラッグ・デリバリー・システム」の研究を進めています。3名の候補者とも現代医学にとって最大の難敵といえるがんに対する研究が評価されています。

いかにがん細胞だけを攻撃するか
がん治療は局所治療と全身治療に大別されます。視覚で確認出来るがんを、手術や放射線で取ったり小さくしたりするのが局所治療、全身にに細胞の単位で散らばったがんを攻撃するのが全身治療です。全身治療の課題はいかに正常な細胞を傷つけることなく、がん細胞だけを攻撃するかに行き着いています。がん細胞は外から侵入した異物ではなく、患者の体内で発生しているので、がん細胞だけを特定することは困難なのです。抗がん剤(殺細胞剤)は、がん細胞が増殖が速いこと着目し、分裂中の細胞を攻撃します。従って、投与した際に分裂中であれば、正常な細胞でも影響を受け、副作用を引き起こします。

免疫抑制を打ち破ることが、がん征圧の鍵
私たちの体に備わっている免疫だけが、体内で発生したがん細胞を識別し攻撃することが出来ます。しかし、がん患者の免疫は働きが弱っていたり、がん細胞が免疫細胞の働きを邪魔したりしているのです。これを免疫抑制といい、がん細胞が免疫細胞のPD-1に結合するPD-L1という蛋白質を出して、免疫細胞の攻撃をストップさせるのもそのひとつといえます。免疫が正常に働きさえすれば、人為的にがん細胞を見分ける必要はないといっても差し支えはありません。

 

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