誤解を招く「光免疫療法」という表現
「免疫」という言葉が使われていても、光免疫療法は直接、免疫でがんを叩くわけではありません。また、「光免疫療法」を名乗っていても、全く別の治療が存在します。
光免疫療法が頭頚部がんで保険適用に
光に反応する色素と近赤外線を利用して、がん細胞を効率よく叩く光免疫療法が、いよいよ保険診療で受けられるようになります。まずは頭頚部がんが対象ですが、今後、様々ながんへの拡大も期待出来そうです。近年、がんを制圧する鍵が、患者自身の免疫であることは、広く周知されるようになりました。免疫が十分に機能していれば、体内の遺物であるがん細胞は、迅速に排除されるからです。この新たな治療にも「免疫」という言葉が使われています。しかし、作用機序を考えてみると、免疫でがんを叩く治療とはいい難いところがあります。
免疫の仕組みで色素をがん細胞に送り込むだけ
光免疫療法では光、即ち近赤外線に反応する色素を、あらかじめ患者に投与し、がん細胞に送り込みます。この時に使われるのが、抗体医薬品と呼ばれるがん治療薬です。がん細胞は、遺伝子に異常があり、結果として特異的に発現している蛋白質があります。抗体医薬品は、この蛋白質を目印(抗原)として作用するのです。確かにここでは免疫の仕組みが使われています。ただ、直接免疫を活発にして、がんを叩くわけではないのです。がん細胞に送り込まれた色素は、光を照射されると発熱します。これによってがん細胞はピンポイントで破壊され、それを呼び水にして、全身の免疫細胞ががん細胞を攻撃しはじめるという効果はあるかもしれません。
別の「光免疫療法」も存在する
もうひとつの誤解は、同様に「光免疫療法」を名乗っていても、全く異なる治療が横行していることです。小林久隆医師が開発し、今回、承認を受けた光免疫療法は、千葉県の国立がん研究センター東病院で当面は治療を開始します。現在、国内で自由診療で行われている「光免疫療法」は、全く異なる手法で行われており、エビデンスも明確ではありません。どうしても光免疫療法を受けたいという患者が間違えてしまうことが懸念されます。