がん遺伝子治療において「遺伝子治療用組成物」の特許を取得
がん遺伝子治療の研究・臨床に従事してきたHICクリニック(東京都・有楽町)院長の平畑徹幸医師は、その蓄積してきた知見を通じてがん遺伝子治療に関する特許を申請していました。そして、令和3年2月15日に「遺伝子治療用組成物」の特許を取得しました。
【特許番号】特許第6837984
【発明の名称】遺伝子治療用組成物
【特許権者・発明者】平畑 徹幸
【特許出願日】平成27年10月23日
【登録日】令和3年2月15日
HICクリニック院長
医師・医学博士
平畑徹幸
1974年東邦大学医学部卒業、1975年東邦大学医学部第一内科(血液内科)を経て、米国留学(米国ノースカロライナ州イーストカロライナ大学 医学部血液腫瘍科 リサーチフェロー)、帰国後にヒラハタクリニックを開業。2008年にはがん遺伝子診断および治療の専門医療を目指し秋葉原でUDXヒラハタクリニック、研究所を設立。 現在、HICクリニックにてがん遺伝子診断および治療、研究所を設立。
がんで亡くなる方が減少しない背景
我が国は、2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代になりました。がんで亡くなる方はなかなか減少しません。保険診療の柱となるのは、手術・放射線・抗がん剤の三大療法ですが、いずれもがんが進行すると根治が難しいばかりか、患者への負担が大きく、治療がかえってQOLを低下させたり、余命を短くしたりする場合があります。三大療法は、いずれもがんを対象として叩きます。しかし、がんという病気の根本から解決するわけではないため、やがては再発や転移を引き起こします。また、QOLの低下などを含め、患者を消耗させ、それががんで亡くなる方が減少しない背景であることは否定出来ません。
がんの原因「遺伝子」から診断・治療する時代へ
がんは、細胞が分裂する際、DNAが正常に複製されず、異常な(無限に、無秩序に分裂・増殖する)細胞が生まれ、それがどんどん分裂と増殖を繰り返していった結果生じます。
今世紀に入って、ヒトのゲノムが解読され、がんの発生に深く関係しているがん関連遺伝子が幾つも発見されています。標準治療ではなかなかがんで亡くなる方が減少しない中、国はゲノム医療を推進しています。遺伝子の病気であるがんは、遺伝子にどんな異常があるかを把握すれば、がんの性質がわかり、それに応じた治療を選択出来るからです。
がん遺伝子パネル検査は、がんに関連する複数の遺伝子を分析し、がんの性質を明らかにしますが、既に保険適用になっています。がんは遺伝子の病気であり、遺伝子で診断する時代になったのです。
がん遺伝子治療への期待
そして、さらに先進的な取り組みとして異常を来たした遺伝子を、人為的に補う治療も研究・開発が進み、既に多くの症例があります。がん細胞の多くは、がん抑制遺伝子が異常を来たしており、そこに人為的に正常な遺伝子を送り込むことで、がん細胞はアポトーシスへ誘導されます。手術、放射線、抗がん剤とは異なり、がん細胞が自然に死へと誘導されるため、三大療法のようなつらい副作用がないという特長があります。
がん遺伝子治療をオーソライズする取り組み
がん遺伝子治療ではどのような手段で遺伝子をがんに送り届けるか、またどんながんに対して、どの遺伝子を、どのような分量で組み合わせていくか、そこが課題になっていました。多くの医師は手探りでそれを行い、一般的ながん抑制遺伝子を中心に処方していました。科学的根拠や多くの症例からノウハウを確立されていなかったのです。そのような中、がん遺伝子治療においては先駆者のひとりとして臨床と研究を行ってきた平畑徹幸医師は、長年の研究と豊富な症例から以下のノウハウを確立し、令和3年2月15日に「遺伝子治療組成物」として特許を取得しました。
<リポソームによるベクター>
遺伝子をがん細胞に送り込むためには、いかにがん細胞に効率よく送り込めるかが求められます。無毒化したウイルスやリポソーム(脂質で構成される小胞)などがベクターとして用いられますが、効率と安全性の面から独自のリポソームベクターを開発。
<がん抑制遺伝子の組み合わせ>
代表的ながん抑制遺伝子であるp53、FUS-1、TRAIL、IL-24などをがんの種類、症状、さらには放射線や抗がん剤との併用を考慮し、分量の割合を含めた組み合わせを考案。
特許取得の影響
従来、がん遺伝子治療は、医師が経験則から漫然と処方したり、基本的ながん抑制遺伝子だけに依存した単純な処方が行われたりしていました。今回、そのノウハウが特許を取得したことで、がん遺伝子治療全体の認知度と信用度が上がるのは無論のこと、治療が標準化され、全体の水準が上がっていくことが期待されます。また、平畑徹幸医師が、ノウハウを権利として特定することで、従来、自由に行われていたがん遺伝子治療の多くが、特許によって保護された知的財産を侵害する可能性があり、漫然と行われていたところが、自然に淘汰されていくことも予想されます。