高須克弥医師が受けている免疫細胞療法について、概容を解説します。
がん患者の免疫細胞を体外で培養して戻す
「全身がん」だと公表し闘病中の高須克弥医師が、今日、TV番組で免疫細胞療法を受けていることを明かしました。4年前に尿管に発見されたがんを、一度は手術で切除したものの、今年になって再発したため、標準治療を補完するために受けているとのこと。免疫細胞療法は、患者自身の免疫細胞を採取し、体外で培養し、再び点滴で戻すという治療です。保険適応ではありませんが標準治療を補完する手段として、自由診療で行われています。
がん患者の免疫は極端に抑制されている
がんは、免疫が十分に機能しなかった結果、がん細胞が大きな腫瘍になっていきます。加齢やストレス、病気などで免疫は低下することがあるからです。しかし、がん患者の免疫は健常者に比べて、極端に低下しています。がん細胞は免疫細胞を混乱させる信号を出したり、免疫細胞に働きかけて、免疫細胞が攻撃出来ないようにしたりするからです。
免疫が本当に目覚めれば、がんは消失する
1900年代はじめに活躍したウィリアム・コーリー医師は、重篤な感染症で高熱を出した患者を診断し、腫瘍が消えていることを発見しました。生死に関わるほどの状態に陥って、免疫が目覚めれば、がんといえども消えてしまうのです。以来、いかに免疫を刺激するかが、がん治療のテーマになりましたが、刺激が強過ぎれば、患者は命を落としかねません。かといって、半端な刺激ではがん細胞による抑制を打破することなど出来ません。これを「コーリーのジレンマ」と呼びました。
NIHが臨床試験で確認したLAK療法の効果
免疫を刺激する薬も開発されましたが、一時的に免疫が活発になっても、すぐにがん細胞の勢いが勝って、免疫は抑制されてしまいます。この問題を解決する手段が、患者の体外で免疫細胞を増やし、さらには活性を上げて、点滴で戻すという方法でした。この免疫細胞療法のプロトタイプがNIH(米国立衛生研究所)が大規模な臨床試験を行ったLAK療法です。50~60lもの血液を体外で循環させながら、免疫細胞を分離採取し、インターロイキン2で刺激を与えてから、3日間培養し、再び点滴で体内に戻すという大がかりな治療でした。既に抗がん剤が効かなくなっている患者数百名に行った結果、腫瘍の完全消失を含め、全員に何らかの効果が確認されています。
NK細胞が十分に機能することが、がん克服の鍵
免疫細胞療法の効果を左右するのは、がん免疫の主役であるNK細胞を、いかに選択的に培養し、活性を維持出来るかにかかっています。何種類もある免疫細胞のうち、がん細胞を見逃さずに排除出来るのは、活性の高いNK細胞だけです。しかし、NK細胞は培養が非常に難しいという問題がありました。NK細胞は培養して時間が経過すると自爆してしまうのです。LAK療法が大量の血液を循環させながら、免疫細胞を分離採取し、培養を3日に止めたのはそのためです。
総合病院を経営する医師が賭けるだけの根拠
現在、NK細胞を自由自在に培養出来る技術を持っているところは限られています。従って効果のある免疫細胞療法は何なのかを見極める必要もあるということです。美容整形外科医として知られる高須医師ですが、総合病院を経営する医師という顔も持っています。番組では効果は保証されていないが試してみるとコメントしていましたが、いいかえれば賭けてみるだけの根拠を見出した結果といえるでしょう。
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