移植された臓器が原因でがんになるという珍しい症例が報告されました。
がん細胞のDNAが、臓器を提供した女性と一致
ひとりの女性から臓器を移植された4人の女性が、相次いで乳がんになり、3人が亡くなったと、オランダのアムステルダム大学のフレデリーケ・ベメルマン博士が移植i医療の専門誌上で報告しました。2007年に脳卒中で亡くなった53歳の女性から、肺の提供を受けた42歳の女性は、手術から16か月後に臓器の機能不全を起こしました。検査の結果、リンパ節から見つかったがん細胞は、肺を提供した女性とDNAが一致したのです。この女性はその後、亡くなりましたが、左の腎臓を提供された62歳の女性、肝臓を提供された59歳の女性も、同様に乳がんになって死亡しています。さらに、もうひとりの患者も乳がんになりましたが、提供された右の腎臓の摘出、免疫抑制剤の投与の中止、化学療法の実施などで一命を取り留めています。
臓器を提供した女性は、医学的には問題なかった
移植前の検査では臓器を提供した女性には、何ら問題は見つかっていませんでした。しかし、提供した女性のDNAと提供された女性のがん細胞のDNAが一致したということは、目に見えないレベルで、移植された臓器にがん細胞が散らばっていたことを意味します。移植手術の後には拒絶反応に備えて、免疫抑制剤を投与します。他人の臓器を異物と認識して排除しないようにするためです。しかし、免疫が抑制されれば、それまで大人しくしていたがん細胞が急激に増えはじめるということは必然といえますこれは極めて珍しい例ですが、がんと免疫の関係、僅かな数からでも増えていくがん細胞の仕組みを物語っているのではないでしょうか。
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