保健診療は安い、自由診療は高いというイメージがあります。しかし、それは患者の負担する金額の話であり、保険診療で行われる標準治療は決して安くありません。
自由診療や先進医療だと数百万円かかる
標準治療で手を尽くした結果、もう出来る治療がなくなったり、標準治療だけでは不安だったりという患者が受ける自由診療は、大変高額というイメージがあります。数百万円は当たり前、回数を重ねれば、さらに大きな桁になることだってあるでしょう。保健適用ではない先進医療にしても陽子線や重粒子線治療は300万円ほどの医療費がかかります。
患者の支払だけを考えれば、保険診療は安い
これに対して標準治療は、経済的な負担は少ないといえます。保健診療であれば医療費は一部しか支払う必要はありませんし、高額医療費制度があるので所得に応じて上限もあります。70歳未満で一般的な所得の方であれば、10万円を超えることはありません。しかし、それは患者にとっての負担の話です。高額で話題になった免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボは、半額に値下げされても、年間に1700万円もかかります。これはあくまで薬代ですから、実際にはそれだけでは済みません。ある大学で末期の大腸がんの患者に対して調査を行ったところ、全員が3年以内に亡くなり、医療費は平均で2000万円ほどだったそうです。抗がん剤などが保険適用になるまでには、治験などに莫大な開発費が注ぎ込まれます。それを回収するわけですから、標準治療は決して安くはないのです。
真っ当な先端医療であれば、相応のコストは当然
藁をも縋る患者や家族の思いに付け込んで、出鱈目な治療を法外な費用で行う医療機関は確かに存在します。説明を冷静に聞けば、専門家でなくとも怪しいと思える治療が横行しています。そのような治療は早々に消えてもらいたいものですが、真っ当な先端医療に関していえば、相応のコストがかかるのは当然の話です。保健診療で行われている治療に、実際にはどれくらいのコストがかかっているかを考えてみれば理解出来るのではないでしょうか。