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2017-01-16

神戸大学ががん免疫治療の新手法を開発

オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤と同じように、がん細胞による免疫細胞への抑制を打破する手法を、神戸大学の研究グループが発表しました。

Word cloud for Natural killer cell

がん細胞は免疫を抑制して生き延びる
がん細胞は免疫細胞から隠れたり邪魔をしたり様々な抵抗をすることで生き延びています。これを免疫抑制といって、がん患者の体内では免疫が十分に機能していないのです。がん治療の鍵が免疫であることが明確になり、新薬の開発も免疫をいかに機能させるかが主流になっています。オプジーボやキイトルーダといった免疫チェックポイント阻害剤もその一例です。がん細胞が発現するPD-L1が、免疫細胞であるT細胞の表面にあるPD-1と結合すると、T細胞は機能しなくなります。免疫チェックポイント阻害剤はPD-L1よりも先にPD-1と結合することで、がん細胞によるT細胞の邪魔を防ぎます。これによってT細胞は本来の攻撃力を回復するというわけです。 

がん細胞はマクロファージの攻撃力を低下させる
今月、神戸大学の研究グループが発表したのは、同様にがん細胞による免疫細胞の抑制を解除する手法です。まず免疫細胞のひとつ「マクロファージ」のサープαにがん細胞が発現するCD47が結合すると、マクロファージは攻撃力が低下してしまうことを確認しました。そして、悪性リンパ腫の細胞を移植したマウスに、CD47との結合を阻害するサープαの抗体と分子標的薬のリツキシマブを投与したところ、リツキシマブ単独の場合よりも腫瘍の成長が抑えられました。T細胞とマクロファージの違いはあれど、がん細胞による免疫抑制を解除するという点では、オプジーボなどと同様の手法といえるでしょう。ヒトに対して安全で有効な抗体が出来れば、新たながん治療薬開発に繋がるでしょう。

がん細胞だけを識別出来る標的は見つかっていない
今後もがんの新薬開発の主流は免疫であり、がん細胞を識別するための新たなる標的を見つけることが繰り返されるでしょう。残念ながら全てのがん細胞にのみあって正常細胞にはないという標的は見つかっていません。PD-L1はがん細胞だけでなく正常細胞にも存在します。免疫は非常に複雑で精緻な仕組みです。恐らくはPD-L1が正常細胞にもあることで、自らの免疫が自らを攻撃することのないように出来ているのかもしれません。オプジーボの副作用である自己免疫疾患は、その微妙な均衡が崩れた結果なのでしょう。

がん免疫の主役はあくまでもNK細胞
また、免疫細胞には幾つかの種類がありますが、オプジーボによって攻撃力を回復するT細胞は、決してがん免疫の主役ではありません。がん細胞はひとつひとつが異なる不良品のようなもので、さらにはどんどん変異していきます。T細胞は特定のがん細胞しか攻撃せず、攻撃対象でないがん細胞であれば見向きもしません。がん細胞を見逃さず、無条件に攻撃するのは、活性の高いNK細胞のみであり、これががん免疫の主役なのです。がん治療は手術や放射線で腫瘍を取り、残ったがん細胞を抗がん剤で叩くという対症療法から、自らの免疫で治していく方向へと変わっています。しかし、どれだけ脇役を支援しても、主役に本来の力を発揮させなければ話になりません。がん治療の鍵は免疫であり、その主役はNK細胞なのです。

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