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2017-05-23

「免疫」で治さないのに「光免疫療法」という違和感

話題の光免疫療法。実用化される数年後にはがんは完全に制圧出来るとでもいうような報道まであります。しかし、この光免疫療法は主な使い方では「免疫」でがん細胞を攻撃するわけではありません。

近赤外線で色素を発熱させ、がん細胞を破壊
光免疫療法は、がん細胞に集まる抗体にIR700という色素を結合させて、患者に投与した後、近赤外線を照射して、IR700を発熱させることで、がんを狙い撃ちにするという治療法です。正常細胞にはダメージを与えず、がん細胞を速やかに死滅させ、コストもかからないということで、数年後の実用化が待たれているということでしすが、果たしてがん細胞だけに集まる抗体はあるのかという素朴な疑問があります。これについては以前に記事を掲載しています。

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光免疫療法は自分の免疫を活かす治療ではない
もうひとつ違和感を拭えないのは、これはストレートな意味での「免疫療法」かどうかということです。確かにがん細胞の抗原に対応する抗体を使用し、免疫という仕組みの上に成り立ってはいますが、がん細胞を破壊するのはIR700であり、抗体医薬品のひとつではありますが、自分の免疫の力を回復、向上させてがんを治すという本来の意味ではないような気がします。免疫が、がん細胞を攻撃するのを邪魔する制御性T細胞を破壊するという使い方もあるようですが、主な使い方としてはがん細胞の破壊になるでしょう。

欧米のがん治療は年々も前から免疫主体
抗がん剤などの対症療法の限界が周知される中、免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」の登場でがん治療が免疫に大きく舵を切っていくことを感じた方は多いかと思います。メディアもがん治療となると「免疫」を連呼します。確かに抗がん剤主体の治療が続いてきた標準治療は、これから変わっていくのでしょう。しかし、がん治療が免疫重視であるのは、欧米ではもう何年も前からのことです。細胞を殺す抗がん剤よりも、がん細胞の増殖を抑え、自らの免疫の力でがんを叩く分子標的薬が主流になっています。

「免疫」という言葉で話題にしたがるメディア
オプジーボは日本発の新薬であること、従来の抗がん剤とは異なり、免疫の力を回復させることなどが注目され、大きな話題になりました。光免疫療法も、開発の中心となっているのは、日本人の医師です。確かに注目されている治療だとは思いますが、メディアが話題になりそうだからと飛びついた感は否めないのです。そもそも全てのがん細胞のみに存在し、正常細胞には存在しない抗原が見つかれば、がんという病気は征圧出来たといっても過言ではありません。そこが実現性の鍵となる以上、光免疫療法はさほど画期的な治療とはいえないのです。

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