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2016-12-12

樹状細胞によるがん治療、和歌山県立医科大学が治験へ

Scientist at work in a laboratory

和歌山県立医科大学が将来の保険適用を目指して、免疫細胞のひとつ「樹状細胞」を使ったがん治療の臨床試験を行うことになりました。しかし、樹状細胞は細菌やウイルスには敏感に反応する反面、がん細胞はあまり認識しないという問題があります。

樹状細胞は免疫細胞の中では伝達係
和歌山県立医科大学が、樹状細胞を使って、膵がんを治療する臨床試験を実施することになりました。樹状細胞を使ったがん治療は、今のところは自由診療で行われていますが、同大学の病院を含めた医療機関で効果を調べ、将来の保険適用を目指しています。樹状細胞は免疫細胞のひとつで、異物を認識すると、その存在を同じ免疫細胞であるT細胞に伝え、攻撃を指示します。がん患者は免疫の活性が落ちており、自らの免疫でがん細胞を排除出来ないことが、発症と進行の背景になっています。そこで患者から採血し、体外で育てた樹状細胞に、がん細胞の目印を認識させた上で、体内に戻し、T細胞にがん細胞を攻撃するよう促すというのがこの治療です。

樹状細胞はがん細胞にはあまり反応しない
免疫は実に優れたシステムですが、免疫抑制といってがん細胞はその監視を潜り抜けたり騙したりすることで生き延びます。また、がん細胞は体内で生まれたものなので、異物として認識することが困難です。樹状細胞は細菌やウイルスに対しては極めて敏感に反応しますが、がん細胞に対してはあまり感度がよくありません。また、がん細胞は頻繁に変異します。T細胞は指示された対象を攻撃するだけなので、樹状細胞が認識しているがん細胞の目印が変わってしまうと、その時点で攻撃は終了です。がん細胞を見逃さず、問答無用で攻撃出来るのは、生まれながらの殺し屋(natural killer)の名前を冠されたNK細胞だけなのです。


培養しやすい樹状細胞は研究の対象にしやすい
冒頭に書いた治験については、樹状細胞ががん細胞にあまり反応しないという問題を解決出来ていないのであれば、効果は期待出来ないでしょう。「免疫細胞療法」といわれている治療の多くは、この樹状細胞やT細胞(CTL)を使っているのですが、実情としては主役であるNK細胞の培養が難しいため、やむをえず簡単に扱える樹状細胞やT細胞を使うしかないのです。研究の対象になることが多いのもそのせいです。免疫細胞療法はNK細胞を活用出来ていなければ、全く効果はないといっても過言ではありません。
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