名古屋大学がプラズマ活性点滴によるがん治療を開発
TV画面の技術などで耳にするプラズマが、
物質の第4の状態「プラズマ」
少し前にプラズマTVという製品がありましたが、プラズマとは時々耳にはしても、その意味を理解出来ていない言葉ではないでしょうか。物質は個体、液体、気体と温度に応じて変化していきますが、その第4の状態がプラズマで、気体を構成する分子が電離し、陽イオン(原子核)と陰イオン(電子)に分かれている状態です。私たちの身近でも幅広く使われている技術で、冒頭に挙げたプラズマTVのほか、蛍光灯やネオンサインなどもそうです。近年、大気圧下で生体に近い温度でプラズマを生成することが可能になり、医療への活用が研究されてきました。プラズマを照射すると、傷を治したり、がん細胞を死滅させたりすることがわかっています。しかし、腫瘍に直接照射することは難しかったり、がんは細胞の単位で散らばって視認しきれなかったりするため、なかなか実用の目途が立っていませんでした。
プラズマを照射した点滴に抗腫瘍効果が
2013年、名古屋大学医学部附属病院先端医療・臨床研究支援センターなどの研究グループは、プラズマを照射した細胞培養液にも抗腫瘍効果があることを突き止めました。プラズマを照射した細胞培養液をがん細胞に与えたところ、脳腫瘍や卵巣がんのがん細胞を死滅させたのです。比較のために正常細胞にも同様のことを行いましたが、大きな影響はありませんでした。プラズマを照射した細胞培養液を投与したがん細胞を調べてみると、多くのがん細胞で恒常的に活性化されている細胞の増殖や生存に関わるシグナル伝達分子が抑制されており、これが抗腫瘍効果に繋がったものと考えられています。
播種性がんの治療法として期待されるプラズマ活性点滴
そして、10月31日、前出の研究グループはヒトに使えるプラズマ活性点滴を開発し、脳腫瘍や卵巣がんに有効な新しい治療法として発表し、英国の科学雑誌『Scientific Reports』のWEB版に掲載されました。ヒトに使用出来る乳酸リンゲル溶液や酢酸リンゲル溶液などにプラズマを照射して点滴を行うことで、脳腫瘍や卵巣がんに対して抗腫瘍効果を発揮し、正常細胞には大きな影響を与えないことを確認したということです。種が散らばるように転移し、標準治療での対処が困難な播種性のがんへの治療法として期待されています。まだ細胞やマウスでの実験の段階ではありますが、今後の臨床実験に向けての大きな前進になったといえるでしょう。