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2016-11-28

陽子線で負担の少ない放射線治療を

atom

陽子線を用いた放射線治療について、その長所や向いているがんについて、わかりやすく解説します。

X線を使うと、正常な細胞にまで影響が
代表的がん治療のひとつに放射線があります。手術のように患部を切開する必要がないため、比較的負担が少ない治療です。しかしながら、問題がないわけではありません。通常用いられるX線などは、体外から照射すると、体の表面で放射線量が最大になり、患部に届かせるためには、通過していく正常な細胞にまで影響してしまうのです。この問題点を解決したのが陽子線です。

陽子線は脳腫瘍や頭頚部のがんに有効
陽子線は体内の任意の深さで放射線量を最大することが出来ます。これをブラッグ・ピークといいますが、従来の放射線による治療で用いられていたX線などよりも、大幅に正常な細胞への影響を軽減することが可能になりました。腫瘍だけを狙って攻撃出来るわけです。脳腫瘍や頭頚部のがんのように脳や脊椎といった重要な器官に近い場合、正常な組織への影響が抑えられることの意味は大きいでしょう。また、手術による外見の変化を避けることにも繋がります。陽子線による治療が向いているのは、脳腫瘍や頭頚部がん、食道がん、非小細胞肺がん、肝がん、膵がん、前立腺がんなど。転移がなく比較的患部が小さな範囲であるがんには有効です。

先進医療だが小児がんには健康保険が適用

デメリットがないわけではありません。陽子線を照射する際には、患部を固定しなければならないため、自分の意志で動きを止められない胃や大腸のがんには向いていません。また、これらの器官は粘膜が薄く、潰瘍や穿孔の恐れがあるためです。もうひとつは費用。「先進医療に係る費用」は健康保険の適用外ですから、およそ300万円を患者が負担することになります。因みに小児がんに関しては今年の4月に健康保険が適用されるようになりました。
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