三大療法の限界が明らかになり、進行がんの制圧手段として期待されているのが免疫細胞療法です。その歴史を遡ると、かつて米国で開発されたLAK療法に行き着きます。
これからのがん治療の鍵は免疫
がん治療は三大療法のように出来てしまった腫瘍をいかに取り去るか、縮小させるかという対症療法的なやり方から、患者自身の免疫を活性化させて、がん細胞を退治するという流れになりつつあります。昨今、話題になっている免疫チェックポイント阻害剤も、がん細胞が免疫細胞を機能させない免疫抑制という状態を打破しようという考えで開発されています。そして、進行がんを完治させる唯一の現実解といえる免疫細胞療法は、血液から採取した自らの免疫細胞を、培養・活性化させて再び戻すという治療になります。この免疫細胞療法の原点といえるLAK療法について、わかりやすく解説します。
NK細胞は増殖すると活性が低下
米国立衛生研究所のスティーブン・ローゼンバーグ博士はかつての大統領であるロナルド・レーガンの主治医であった人物ですが、1980年代にがん治療における免疫の重要性に着目し、患者自身の免疫細胞を体外で培養・活性化し、再び体内に戻し、がんを攻撃させるという治療を開発しました。幾つかある免疫細胞のうち、がん細胞を無条件で攻撃するのはNK細胞だということは、当時から知られていました。しかし、NK細胞は増殖するにつれて活性が下がるという培養の難しさがあったのです。そこでローゼンバーグ博士はNK細胞を含む大量の血液を採取し、免疫を刺激するインターロイキン2で活性化した後、本格的な増殖が始まる前に、体内に戻すということを試みました。これがLAK療法です。
LAK療法は副作用やコストの面で実用化されなかった
末期がんの患者を対象に行われた臨床試験では、腫瘍が消失するなど、目覚ましい効果が見られた例があります。しかしながら、問題は急激に起こる免疫反応や、多量に死滅したがん細胞の影響で、患者の体に大きな負担がかかることでした。また、数日間かけて大量のリンパ球を採取し、免疫細胞を培養・活性化して戻すという作業を続けるには、現実的でないコストが必要でした。一時は全米で大きな話題にまでなったLAK療法ではありましたが、過剰に期待を集めた反動もあって、実用的ではないという結論に至りました。
NK細胞の量と活性は十分か
とはいえ、LAK療法は活性の高いNK細胞を増やすことで、進行がんであっても腫瘍を縮小や消失させるということを明らかにした点で、免疫細胞療法における原点といえる治療です。現在、国内で行われている免疫細胞量は概ねこのLAK療法の延長線上にあります。とはいえ、玉石混交という状態であり、本当に効果のある治療を選ぶことが求められます。十分なNK細胞を培養し、なおかつ活性を保つことが出来ているのか、そこをしっかりと確認してください。また、NK細胞ががん細胞を攻撃すれば、多少なりとも副作用があります。効果と副作用の兼ね合いをしっかりと見極めつつ、体内に戻せているかどうか、そのノウハウの有無についても判断の材料となるでしょう。