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2020-05-18

抗体薬物複合体「エンハーツ」が薬価収載

分子標的薬と一般的な抗がん剤それぞれのメリットをそのままに、デメリットを補完したエンハーツが、保険診療で使えるようになります。

トラスツズマブとデルクステカンの組み合わせ
5月13日、厚生労働省中央社会保険協議会総会が行われ、がん関連では5成分が薬価収載を承認されました。注目すべきは、化学療法歴のある手術不能、再発の乳がんに対して承認された第一三共のエンハーツで、既存の成分を組み合わせた抗体薬物複合体です。ハーセプチンの製品名で知られる分子標的薬「トラスツズマブ」と低分子の抗がん剤「デルクステカン」を結合させ、それぞれのメリットを引き出し、デメリットを補完しています。

攻撃力はそのままに、副作用は軽減
一般的な抗がん剤は、がん細胞が正常細胞よりも頻繁に分裂することに着目し、分裂中の細胞を傷害します。がん細胞を直接叩ける反面、分裂していないがん細胞は生き延び、分裂中であれば正常細胞も巻き添えになり、つらい副作用を招きます。分子標的薬は、がん細胞に特異的に発現する蛋白質を目印に作用し、分裂を抑制します。トラスツズマブをはじめ免疫を刺激するものが多く、がん細胞をさらなる増殖を食い止めて、患者自身の免疫でがん細胞を叩きます。効き目は一般的な抗がん剤よりも穏やかですが、副作用は軽微です。抗体薬物複合体は、一般的な抗がん剤の切れ味をそのままに、分子標的薬の働きでがん細胞を狙い撃つという性格があります。

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