2023-10-17
抗体薬物複合体は、次世代新薬の主流になれる
エンハーツをはじめとする抗体薬物複合体が、オプジーボやキイトルーダのようにがんの新薬の世界を席巻するかもしれません。
抗がん剤と抗体医薬品のいいところどり
抗体薬物複合体「エンハーツ」が乳がんだけでなく幾つかのがんに保険適応を拡大させています。抗がん剤の一番の短所は、分裂中であれば正常細胞まで傷害し、様々な副作用を招くことです。この課題を克服するために、抗体医薬品と結合させたのが抗体薬物複合体です。がん細胞は、遺伝子が変異し、異常な分裂と増殖に関係する蛋白質が、特異的に発現しています。免疫の仕組みを利用して、この蛋白質を抗原として認識し、異常な分裂と増殖を抑制するのが抗体医薬品です。従来の抗がん剤のようにがん細胞を直接攻撃するわけではありませんが、がん細胞に効率よく作用します。抗体医薬品は、この両者の長所、即ち抗がん剤の攻撃力と抗体医薬品のがん細胞に効率よく作用する性質を兼ね備えているのです。エンハーツは、抗HER2抗体を利用しているので、当初に承認されたHER2陽性の乳がんだけでなく、HER2陽性のほかのがんにも有効であることが考えられ、既に承認された胃がんだけでなく、多くのがんで治験が進められています。そして、この抗体医薬品と抗がん剤の組み合わせは、ほかにも応用が可能です。オプジーボやキイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害剤が、既存のがん治療薬とは全く異なる作用機序で市場を席巻したように、抗体薬物複合体にも大きな可能性が秘められています。
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