2021-06-01
血液のがんで3製品が実用化されたCAR-Tの今後
キムリアの競合製品が出てきたCAR-Tですが、多くの患者が気にしているのは、固形がんへの応用でしょう。
CAR-Tを固形がんに応用する上での課題
患者のT細胞の遺伝子を改変し、がん細胞への攻撃力を高めた上で培養し、再び患者の体内に戻すCAR-T療法においては、2019年に保険診療で使えるようになったキムリアに続き、今年になってイエスカルタ、ブレヤンジが薬価収載され、3製品が実用化されています。いずれも血液のがんが対象であり、それ程多くの患者がいるとはいえません。気になるのは固形がんへの応用ですが、これには幾つかのハードルを越える必要があります。T細胞には膨大な種類があり、それぞれのタイプに応じた抗原を認識して攻撃します。キムリアであればがん化したB細胞表面に発現するCD19という蛋白質を目印にするよう、遺伝子を改変します。ところが、このCD19は正常なB細胞の表面にも発現しており、がん化した細胞だけを攻撃するわけではないのです。B細胞であればγグロブリンの投与で失われた分を補充出来ますが、固形がんの場合、正常な組織をCAR-Tが攻撃した場合、それをカバーする手段がないのです。がん細胞だけを攻撃するよう、適切な抗原を見つけられるか──これはがんの新薬開発の永遠のテーマでもあります。
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