がん克服の鍵はセカンドオピニオン
「再発や転移を防ぎたい」「がん難民になりたくない」「ステージ4や末期でも諦めたくない」主治医のほかにかかりつけのがん専門医を
がん克服の鍵はセカンドオピニオン
標準治療だけでは進行がんの征圧は難しい
我が国には誰もが高度な医療を受けられる国民皆保険という素晴らしい制度があります。殆どの方にとって医療機関にかかることは、保険診療を受けることを意味します。
がん患者さんに対して保険診療で行われるのが標準治療です。標準治療は科学的根拠や多くの検証に基づく信頼の出来る治療です。しかし、がんが進行してくると、標準治療だけでは征圧は難しくなります。
がん治療の基本は腫瘍を取り去ることです。早期のがんで原発部位や周辺のリンパ節に留まっている場合は、手術や放射線で局所治療を行うことが可能です。しかし、遠隔転移したがんは、全身にがん細胞が散らばっているため、局所治療だけでは対応出来ません。
この場合、抗がん剤による全身治療が行われます。抗がん剤は、がん細胞のような分裂の早い細胞を傷害しますが、再発・転移の原因となるがん幹細胞は、分裂が遅く、抗がん剤が効きにくくなっています。そのため、抗がん剤で完全にがん細胞を征圧するのは難しいのです。
進行がん克服のため、先端医療などで標準治療を補完
がんと診断された時、ある程度進行していた場合、標準治療だけはなくそれを補完する治療を組み合わせて、治療戦略を立てることをお勧めしています。
標準治療だけでは完全にとれたように見えても、再発や転移のリスクが残ります。
また、全身に散らばって手術が出来ないがんの場合、抗がん剤による全身治療を行うことになりますが、奏効率はファーストラインで3~5割、セカンドラインで1~3割といわれます。こうなるとやがては標準治療では打つ手がなくなり、緩和ケアで症状を抑えることしか出来ません。
散らばったがん細胞を排除するには、遺伝子治療や免疫治療といった標準治療以外の治療で補完していく必要がありますが、こうした治療は基本的には自由診療で行われています。保険診療ではそれ以外の治療を行うことも勧めることも出来ませんから、標準治療を行う主治医のほかに先端医療などの自由診療に精通したかかりつけのがん専門医を持っておくことが求められます。
同じ標準治療でも受け方によって大きな差が出てくる
保険診療の原則は均てん化された医療です。しかし、現実には医師や医療機関による治療の優劣は存在します。
多くの場合、がんと診断されたら、その医療機関やそこから紹介された大きな医療機関で治療を行います。そこでの治療がベストであるとはいいきれないのが現実なのです。
また、標準治療では部位や進行の度合い、それまでの治療の経緯によって治療がガイドライン化されています。基本はガイドラインに従うといっても、主治医がどう判断するかで、治療は変わってきます。
例えば既往症によっては合併症のリスクを考えて、手術を断られるケースがあります。しかし、別の医師、別の医療機関であればリスクの程度によっては手術を出来る場合があるのです。
同じ標準治療を受けるにしても、出来るだけ質の高い治療を受けたいものです。そして、医師や医療機関をよく知っているのは医師です。自分のがんを得意としている医師や医療機関について、セカンドオピニオンで情報を集めるのは賢明なことだと思います。場合によってはセカンドオピニオンを求めた医師から紹介してもらうことも可能です。
ステージ4や末期のがんでも治療出来る手段はある
標準治療だけで飛び散ったがん細胞を完全に排除するのは非常に難しいです。従って、進行がんへの治療は基本的に延命になります。
転移・再発したがんは基本的には手術出来ません。抗がん剤で全身療法を行うことになりますが、抗がん剤の奏効率はファーストラインで3~5割です。抗がん剤とて全てのがん細胞を排除することは出来ませんから、何度か投与を続けるのですが、抗がん剤が効かないがん細胞が生き残り、耐性が生じてくるのです。
セカンドラインで別の抗がん剤を使った場合の奏効率は1~3割。ガイドラインではサードラインまでの抗がん剤が決まっていますが、奏効率はどんどん悪くなります。
そして、使える抗がん剤がなくなれば、後は緩和ケアしかありません。
しかし、手段がないというのはあくまでも標準治療のガイドラインに従った場合です。自由診療も含めて考えれば、ステージ4や末期の患者さんでも出来ることはあります。
がんは患者さんひとりひとりが異なる病気といっても過言ではありません。特に進行がんのセカンドライン以降は個別の治療戦略が立てられるかどうかで、生存率やQOLが大きく変わってきます。
ステージ4や末期のがんでも諦める必要はありません。標準治療以外の選択肢を提案してくれる医師に、セカンドオピニオンを求めてみてはいかがでしょうか。
今、受けている治療や主治医に疑問や不満を感じたら……
多くの患者さんにとってがんは生死に関わる重大な病気です。一番頼りにしたいのは主治医のはずですが、残念ながらお互いの相性がよくないことがあります。
患者さんは不安ですし、立場も弱いので、なかなか医師には思い切ってものがいえないことが多いかと思います。関係が悪くなって、治療が円滑に出来なくなったり、以後の診療を断られたりするのではないかという懸念もあるでしょう。
今受けている治療が合わないとか、よくわからないという時は、遠慮なく質問してみるべきです。また、場合によっては医師や医療機関を変更することもありえます。
そのような際の相談先として主治医とは別にかかりつけのがん専門医を持っておくことをお勧めします。
また、保険診療を行っている大きな医療機関では、主治医がひとりの患者にかけられる時間は限られます。どうしても事務的な対応になったり、説明やコミュニケーションに十分な時間をかけられないことがあります。
それを補完する意味でも、かかりつけのがん専門医を持っておくといいでしょう。
≪取材協力≫ 銀座みやこクリニック https://gmcl.jp/