人手不足が顕著になる中、従業員をがん治療で辞めさせるのは損失だとして、多くの企業で治療と仕事が両立しすいような取り組みがはじまっています。
伊藤忠商事やテルモなどが従業員のがん治療を支援
昨年、改正されたがん対策基本法では、雇用者に対してがん患者の雇用継続に配慮するよう求めていますが、多くの企業で従業員のがん治療を支援し、仕事と両立しやすくなるような取り組みがはじまっています。伊藤忠商事では会社負担で5年ごとのがん検診が受けられるようにするほか、がん保険に加入することで、先進医療の費用まで補助する予定です。また、テルモでは既に「がん就労支援ルール」があり、労働時間の短縮、繰り上げ・繰り下げなどが柔軟に行われています。大京では未消化で積み立てられた有給休暇を、従来は5日以上の単位で病気治療に使えたのを1日単位に変更しました。大鵬薬品工業も同様に2週間以上であったのを5日以上に変更しています。
余力のある大企業だから従業員のがん治療を支援出来る
がん治療を続けながら就労している方は約33万人。今後も増えていくことが見込まれます。そして、がんになって仕事を辞める方は3分の1以上の割合。企業は人材で成り立っており、がん治療が進歩し、仕事に復帰出来る確率が高まるなら、企業が労働環境を整えて、人材の流出を防ぎたいと考えるのは当然のことでしょう。しかし、日本の企業の多くは中小や零細であり、経済の下支えをしているのはこれらの企業です。がんになった従業員の支援をしたくても、余力のある大企業と同じようには出来ないのが現実です。国が雇用者に対してがん患者の雇用継続に配慮せよというなら、こうした中小、零細企業に対しても支援をしていかなければ、改正されたがん対策基本法は実効性を持たないのではないでしょうか。