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2017-10-05

話題のCART-Tは免疫細胞療法の一種

 

免疫細胞の遺伝子を改変し、がん細胞への攻撃力をアップさせるCART-Tが、急性リンパ性白血病の薬としてFDAから承認されました。

標的物質を見つけやすいよう、T細胞の遺伝子を改変
大手製薬会社のノバルティスが開発していた「キムリア」が、小児・若年者の急性リンパ性白血病の薬としてFDA(米食品医薬品局)の承認を受けたことが発表されました。キムリアは次世代のがん治療として多くの製薬会社が参入しているCART-T(キメラ抗原受容体細胞)の一種で、免疫細胞のT細胞に対して遺伝子の改変を行い、がん細胞に多く見られる標的物質を認識しやすくし、攻撃力を高めます。急性リンパ性白血病は免疫細胞のB細胞ががん化して起こりますが、CD-19を発現しており、CART-Tはそれを標的として攻撃するわけです。

固形がんに対しては血液のがんほどの効果は得られていない
大きな期待を寄せられているCART-Tですが、幾つもの課題はあります。T細胞を使う以上、同じ標的物質を持っていれば正常細胞も攻撃します。実際、急性リンパ腫の治療に使用した場合、正常なB細胞も攻撃するため、患者の免疫が低下し、それに対するケアも必須になります。また、固形がんに対しては血液のがんほどの効果は得られていません。標的に依存する治療なので、現代のがん治療が行き着いた課題である「がん細胞にのみ存在する物質」を特定しない限り、劇的な治療とはならないのです。そして、これは既に多くの報道がありますが、5000万円以上という膨大な費用がかかります。高額と批判されるオプジーボの3倍近い金額です。

免疫に本来の力を発揮させることが、今のがん治療の主流
手術や放射線、抗がん剤など人為的な手段でがんを叩くことには限界があり、免疫に本来の力を発揮させて、がんを治すというのが、今のがん治療の主流です。免疫が低下しているからがんになり、またがん細胞は自らが生き残るために、免疫を抑制するので、がん患者の免疫は非常に弱った状態です。そこで、体の外に取り出した免疫細胞を、人為的に強化し、再び体内に戻すというのが免疫細胞療法です。大きな期待と注目を集めるCART-Tも、免疫細胞療法の一種だということです。

真っ当な免疫細胞療法まで否定されかねない現状
このところ、著名人ががんで亡くなることが多いからか、がん治療に対する報道が多くなりました。その中で免疫細胞療法を批判する記事も少なからずあります。批判はもっともなことで、大した、いや全く効果がないのに、高額な費用のかかる免疫細胞療法紛いの治療が蔓延しているのは事実です。しかし、かつて米国で治験が行われたLAK療法の劇的な効果でもわかるように、免疫細胞療法の考え方は真っ当であり、その延長線上でCART-Tも開発されているわけです。真っ当な理論と手順で行われ、多くの患者を救っている免疫細胞療法もありますが、見識の乏しいメディアが十把一絡げに扱うことで、全てが否定されてしまうのは、患者にとって治療の機会を奪うことになります。

 

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