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2017-03-16

オプジーボはイレッサの愚を繰り返すのか?

「夢の新薬」といわれるオプジーボ。実は15年ほど前にも同じく「夢の新薬」と話題になったがんの薬があります。


薬害訴訟にまでなった「夢の新薬」
15年ほど前、「夢の新薬」と持て囃されたイレッサという薬があります。現在でこそがんの新薬開発の主流は分子標的薬になりましたが、当時、使われている薬はまだ少なく、従来の抗がん剤(殺細胞剤)とは全く作用機序が異なるということで、副作用が少ないとして話題になったのです。期待を背景に、製造・販売の申請からは通常では1年はかかるところ、半年という異例のスピードで承認が下りました。ところが、副作用として起こった間質性肺炎で亡くなる患者が、何人も出たため、薬害訴訟にまで及んだという不幸な経緯があります。


イレッサの作用機序ははっきりしていない
イレッサは世界各国に先駆けて我が国で承認されました。しかし、その後の海外の治験では効果を証明出来ず、申請を取り下げ、米国に至っては使用を禁じられています。イレッサはがん細胞表面にある上皮成長因子受容体(EGFR)に働きかけて、シグナルの伝達を遮断することで、がん細胞の増殖を防ぎます。しかし、この作用機序は実際にははっきりしておらず、EGFRを発現しているがんであっても効果がない場合が多かったのです。

効果がなく副作用リスクのみを被った患者
後の研究でイレッサが効果のあったがんについては、EGDRに遺伝子の変異があることがわかり、現在ではこれでイレッサの効果が予測出来ることが定説になっています。ところが、当初は、効果がないと予測される患者にも、イレッサが使われていたのです。イレッサの副作用については予測されていましたが、問題は効果がないのに使われて、副作用のリスクのみを被った患者がいたということです。


オプジーボにも大きな副作用リスクが
ここまでの経緯を読まれて、かつての「夢の新薬」と直近の「夢の新薬」に符合する点を感じられた方は多いのではないでしょうか。オプジーボは自己免疫疾患の原因となるT細胞のブレーキを解除する薬です。微妙なバランスで成り立つ免疫に人為的に手を加えることは、ともすれば暴走を招き、自己免疫疾患という生死に関わる事態を招きます。オプジーボが標的とするPD-L1はがん細胞だけでなく正常細胞にも存在するのです。そして、オプジーボの問題点は事前に効果を判定することなく使えることです。PD-L1を発現しない(オプジーボが効かない)がんにも使えてしまうのです。

効かない患者に薬を使うのは愚かなこと
効く薬なら副作用があるのは当たり前です。それをわかった上で、様々な状況に備えて使うことが求められます。生検は患者の負担になることは事実ですが、効かないことがわかっている薬を使うのは愚かとしかいえません。また、容認出来ないのは「夢の新薬」を宣伝材料にして、安易な患者集めに走る自由診療の医療機関です。オプジーボは免疫に働きかける薬とはいえ、作用機序からして効かないがんはある程度は予測出来ます。標準治療が出来なくなったらといって見境なく使えば、副作用のリスクだけあるということになりかねません。また、重篤な副作用の恐れがあるなら、体制や設備の整った医療機関で使うべきです。
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