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2017-03-14

「上場企業」「大学が治験」で治療を選んでよいのか?

免疫細胞療法を手がける上場企業のテラが、保険適応を視野に入れた和歌山医科大学での治験を前に、樹状細胞ワクチンの培養センターを設置しました。

主流は標準治療から免疫系の治療へ
標準治療の限界がはっきりする中、がん克服の鍵は自らの免疫をいかに正常に機能させるかに焦点が当てられています。何かと話題の免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」も、がん細胞が免疫細胞にかけているブレーキを解除するように作用します。もうひとつ、主な免疫系の治療といえば免疫細胞療法が挙げられます。これは自らの免疫細胞を体外で培養して戻すという治療です。がん患者の免疫は低下しているため、それを人為的に後押しするわけです。

テラは早ければ2022年に承認申請
免疫細胞療法はまだ保険適応にはなっていません。再生医療に関する法律が整理され、免疫細胞療法を手がける企業の幾つかは、将来の保険適応を目指していますが、そのひとつである上場企業のテラが治験のための樹状細胞ワクチンを作る培養施設を、川崎市に設けました。今後、和歌山医科大学がこのワクチンを使って、膵臓がんを対象にした治験を行い、早ければ2022年の承認申請を予定しています。免疫細胞療法は概ね300万円前後の費用はかかりますから、保険適応によって多くの患者が受けられるようになるでしょう。

治療、ビジネス、研究は同じベクトル上にない
標準治療で行き詰った患者、それに疑問を感じた患者が、免疫細胞療法を選ぶケースが増えています。多くの企業や医療機関からどこを選ぶのか、相応の費用がかかる上に、命を懸けた選択になりますから、何を根拠に選ぶのかがポイントになるでしょう。上場企業、大学が治験……を信頼の材料にする方は多いかもしれません。しかし、覚えておいていただきたいのは医療の世界において治療とビジネス、研究は必ずしも同じベクトル上にないということです。

がん免疫の主役はあくまでもNK細胞
免疫細胞療法の多くは樹状細胞を使っていますが、がん免疫の主役はあくまでもNK細胞です。がん細胞にはあまり反応しない樹状細胞を使うのは、培養が容易であり、ビジネスや研究の対象として扱いやすいからです。活性の高いNK細胞は体内の異物を見つけ次第に排除します。免疫細胞療法においてはこのNK細胞をいかに増やし、活性を維持するかが王道なのですが、問題は培養して活性を保つことの難しさにあります。いいかえればこれをクリア出来ている免疫細胞療法でなければ、高い費用を払って受けても意味がないのです。

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