東レががん治療薬の分野に本格的に乗り出すことになりました。大手化学メーカーとして蓄積した技術やノウハウはどのように活かされるのでしょうか。
3月中に治験開始、2022年の製造・販売を目指す
大手化学メーカーの東レが製薬事業に本格的に参入し、がん治療薬を開発することになりました。米国では治験の許可を得ており、3月中には臨床試験を開始し、2022年頃の製造・販売を目指しています。同社は既に製薬事業を行っていますが、売上比率は3%程度。患者の多いがんの領域で事業をさらに拡大させるとのこと。
10年前にがんの標的物質を発見
どのような薬か、詳細は明らかにされていませんが、同社は10年ほど前にがん細胞の目印となる蛋白質を発見しており、それと結合して、がん細胞を攻撃する薬ということなので、現在の新薬開発の主流である分子標的薬の一種でしょう。同社が発見した標的物質は、肺がんや乳がんなど16種類のがんに共通して発現。化学メーカーとしてのノウハウを活かして、それに結合する物質が開発されていますが、動物実験などではがんを大幅に縮小させることが確認されています。
がん征圧の鍵はがん細胞を特定すること
これからのがん治療において一番の課題はがん細胞の特定です。がん細胞を特定出来れば、正常細胞を傷つけることなく、がん細胞を攻撃することが可能になるからです。しかし、自らの体内で生まれるがん細胞は、細菌やウイルスのように化学的な識別が容易ではなく、そこが新薬開発のテーマとなっています。がん治療には異業種からの参入が増えていますが、技術やノウハウのある企業は、どんどんそれらを活かして、がん征圧に繋げてもらいたいものです。
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