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2016-07-27

がん治療では当たり前の医療用麻薬

A close up view of cured weed buds along with a marijuana plant that has a flower growing.

大麻の所持は治療のためだとして、無実を訴えていた肝がんの患者が亡くなりました。医療用大麻の合法化を訴えていましたが、実は医療、特に末期がんの治療の現場では医療用麻薬は既に適切、そして安全に使われています。

大麻はあくまでも治療のため
先々週の記事でお伝えした大麻の所持で逮捕・起訴された肝がんの男性が、7月25日に亡くなりました。病院ではこれ以上は手の施しようがないと診断され、最後に頼ったのが大麻でした。痛みが治まり、精神的にも楽になったばかりか、腫瘍マーカーの数値も改善し、大麻はあくまでも治療のためであり、生存権の行使だとして、無実を主張していました。被告の死亡で控訴は棄却、8月には論告求刑が行われる予定でしたが、生きる権利として大麻が許されるかどうかの判断が、今回、司法の場で下されることはなくなりました。

関連記事:末期がん患者への医療用大麻の是非

Morphine word cloud concept with drug medicine related tags

医療用麻薬は依存症にならない
我が国の医療の現場でもモルヒネなどの医療用麻薬は用いられています。末期のがんの患者の痛みの緩和のために用いるのは決して珍しいことではありません。知っておいていただきたいのはこのような使い方において決して医療用麻薬に中毒性などの害はないということです。モルヒネは体内に入ると、オピオイド受容体に作用して、鎮痛などの効果を発揮します。オピオイド受容体には3つの種類があるのですが、そのうちふたつは依存症の形成、ひとつは依存症の抑制を促します。痛みのある状態でモルヒネを使用すると、後者の働きが強くなるため、依存症に陥ることはないのです。適切な使用であれば問題はないはずなのに、「麻薬」に対するネガティブな印象が強いからか、使用をためらう患者は、まだ少なくないようです。また、既に手の施しようがないから、麻薬を使ってでも楽にするのが医療用麻薬だという勘違をしている方もいるくらいです。

医療用と嗜好品は大麻合法化は別問題
医療用大麻を医療用麻薬のひとつと考えれば、検討の余地はあると思います。とはいえ、適切な使用がなされるよう、その有効性と危険性の検証と、使用に際しての基準などの作成は必須です。先進国の中には大麻を医療用としてはもちろん、嗜好品としても認めているところがあります。それを根拠に医療用大麻の合法化を求めている方はいますが、大麻の有効成分とされるカンナビノイドには、脳にダメージを与える作用があることも明らかになっています。 

従来の医療用麻薬以上の効果があるか
医療用大麻の合法化はどうしても大麻の嗜好品としての解禁と混同され、歪んだイメージで見られがちです。既に医療の現場で使用されている医療用麻薬のひとつとして、選択肢に加えるか否かと考えれば、話はわかりやすくなるでしょう。その上で従来の医療用麻薬にない薬理作用がはっきりとすれば、それはがんをはじめとする重い病と闘う患者にとっての朗報となります。被告の男性は前回の公判の際、次回は法廷に立てるかどうかわからないといいつつ、ほかのがん患者のためにも判決を見届けるまでは死ねないとコメントしていました。今回は残念ながら判決を見届けることなく亡くなったわけですが、今後、医療用大麻についての検証はさらに進むのではないでしょうか。

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