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2016-07-07

6.免疫療法の真打「ANK療法」

 

enjoying the life together
免疫抑制のかかったNK細胞の活性を、体内でがんが治るレベルまで高めるのは危険です。その難題をクリアしたのが、体の外でNK細胞を増殖・活性化して、体内に戻すANK療法でした。

サイトカインの大量投与は危険
がんに対する免疫療法は1980年代にサイトカインが量産されるようになって、大きく前進しました。免疫刺激物質のサイトカインのうち、最も重要だったのはIL-2(インターロイキン2)です。まず、これを体内に投与して、免疫を刺激する方法が試みられました。しかし、少量の投与ではほぼ効果がなく、効果を上げるには、危険なレベルの免疫副反応(激しい炎症や発熱など)を伴うIくらいの大量投与が必要でした。

体外でNK細胞を活性化し、再び体内へ
そこで、強い免疫抑制のかかった体内から、免疫抑制の及ばない体の外にNK細胞を取り出し、活性化してから体内に戻すという免疫細胞療法が考案されました。免疫細胞療法の有効性と奏効する条件を明らかにしたのは、1984年にアメリカで行なわれたLAK療法の大規模臨床試験です。透析に使うような機械で、体外に血液を循環させ、遠心分離で採出した大量のリンパ球に、IL-2を加えて活性化し、3日以内に大量のIL-2とともに一度に点滴しました。

Medical monitorsNK細胞の活性を保つのは難しい
NK細胞の培養は今日でも非常に難しい技術です。当時は他の免疫細胞と一緒に活性化する以外の手段がなく、3日以上培養すると、NK活性がまた下がってしまうため、一気に体内に戻すしかありませんでした。そうなると強い免疫刺激に伴う激しい副反応は免れません。一気に破壊された腫瘍から出るカリウムでショック死するケースなどがあるため、LAK療法は集中治療室で実施されました。実際、数百人の被験者の中には亡くなる方がいました。

LAK療法が示した免疫細胞療法のエビデンス
しかしながら、LAK療法では目覚ましい効果が確認されます。半減以下の腫瘍縮小効果が見られたのは、全体の15~25%でしたが、全員に何らかの効果が確認され、中には腫瘍が完全に消えて再発しない方もいました。抗がん剤を大量投与しても効かないほど免疫がダメージを受けた患者を対象とし、1回だけの治療で上げたことを考えると、素晴らしい成績でした。免疫細胞療法にはエビデンスがないという意見がありますが、小規模な臨床試験をしてみただけで、大規模な免疫細胞療法の実態を知らないからです。

培養しやすいCTLを使った免疫細胞療法も
しかし、LAK療法はNK細胞の培養が極めて難しいこと、莫大な費用がかかって、経済的に成り立たないことなどから実用化されませんでした。その後、簡単に培養出来るT細胞(CTL)を使って、より実現可能性の高い免疫細胞療法の研究が進みました。少量の血液から採取したリンパ球を増やす免疫細胞療法や樹状細胞療法、がんペプチドワクチン療法などは、その流れを汲む治療法です。

adobestock_21803565sLAK療法を進化させたANK療法
一方で本命のNK細胞にこだわった日本の研究者がいました。そして、1990年代にNK細胞の活性化と選択的増殖を両立する培養技術を確立し、LAK療法の効果と安全性を高めた「ANK療法」を完成させます。この治療法は単独でがんを治す小規模な臨床試験を経て、2001年から一般診療が行われています。ANK療法でもLAK療法と同様に大量の循環血液からNK細胞を含むリンパ球を採取します。そのリンパ球から2~3週間でNK細胞を選択的に増殖・活性化します。この細胞は凍結保管出来るため、投与するタイミングを自在に調整出来ます。

NK細胞が免疫細胞を総動員
活性化したNK細胞を点滴すると、がん細胞を攻撃するとともに、大量の免疫刺激物を放出して、仲間の免疫細胞を目覚めさせようとします。点滴直後には発熱などの免疫副反応が出ますが、安全なレベルで点滴を繰り返します(原則1クールは12回)。初めはがんによる免疫抑制で、点滴したNK細胞の活性もまた低下します。これを繰り返すことで、がんと闘えるレベルまで、免疫を回復させていくのです。

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