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2020-10-01

抗がん剤は日本でしか使われなくなっているという話の真偽


抗がん剤についてはその副作用が周知されるにつれて様々な誤解が生じています。

欧米では抗がん剤が使われなくなっているのは本当か
抗がん剤の副作用については昨今、周知されるようになりました。分裂中であればがん細胞だけでなく正常細胞も攻撃するため、下痢や吐き気、手足の痺れ、脱毛や爪の変色など、様々な症状に悩まされます。また、免疫細胞がダメージを受けるため、がんと闘う要である免疫も低下することは避けられません。そのような副作用が話題になる際、抗がん剤のような薬を使っているのは日本くらいで、欧米では使われなくなっているとか、WHO(世界保健機関)は禁止しているとか、そんな話がついてきます。この真偽について考えてみましょう。

古典的な抗がん剤と新しいタイプの抗がん剤
まず抗がん剤の定義を明確にしましょう。多くの方がイメージする抗がん剤は、分裂中の細胞を攻撃する古典的な抗がん剤(殺細胞剤)です。これに対して近年、開発されているがんの新薬は、分子標的薬といってがん細胞に特有の蛋白質を目印に作用し、直接破壊するのではなく、分裂・増殖を抑制します。従って、副作用は殺細胞剤に比べて極めて軽微といえます。分子標的薬を新しいタイプの抗がん剤というように、抗がん剤のひとつとして扱うのであれば、欧米でも抗がん剤の使用は増えているのが現状です。また、WHOが策定する必須医薬品のリストの中にも、古典的な殺細胞剤を含めて多くの抗がん剤が入っています。

標準治療は、効果がなくなるまで続く
我が国には国民皆保険という優れた制度があり、がんになると標準治療がガイドラインに沿って行われます。患者が治療を止めたり、治療に耐えられなくなったりしない限り、効果がなくなるまで続けられます。その中では副作用の強い古典的な殺細胞剤も含まれています。これが欧米になると全てのがん患者が保険診療を受けられるわけではありません。経済的な理由などである程度、がんが進行したら治療しないという選択をする場合が少なくありません。その結果として我が国で抗がん剤の使用量が多くなっている側面はあるでしょう。

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