2023-01-24
プレシジョン・メディシン=ゲノム医療とはいえない
個々の患者の遺伝子の変異に応じて治療を選択するゲノム医療が推進されています。
本当に的確な医療といえるか
近年、「プレシジョン・メディシン」という言葉が、がん治療で用いられます。そのまま日本語に翻訳すれば、「的確な医療」になります。標準治療では長らく部位別のガイドラインに沿った治療が行われてきました。結果、なかなかがんで亡くなる方が減らない中、個々の患者に応じて最適な治療を選択しようということになり、その手段としてゲノム(遺伝子の変異)が使われているのです。がんは、遺伝子の変異が積み重なって、無秩序かつ無限に増殖する細胞が生まれ、それが大きな腫瘍になった結果です。そこで、異常な増殖に関わっている遺伝子を見つけ出し、その働きを抑える分子標的薬を投与します。とはいえ、これが必ず奏効する「的確な治療」とは限りません。がん細胞は様々な遺伝子の変異が積み重なり、さらにいえば、どんどん変異を続けます。特定の遺伝子の変異に対して開発された分子標的薬が、必ず奏効するとは限りませんし、使っているうちに効果がなくなることも少なくありません。遺伝子の変異を的確に捉えること、それはがん治療の普遍の課題といえます。
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