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2021-06-03

高額な薬価のCAR-Tが次々に保険適用になり、財政は圧迫されるのか?


バイオ医薬品が新薬の中心となり、薬価はどんどん高騰しています。

CAR-Tの薬価は3000万円以上

一昨年、CAR-Tとしてはじめてキムリアが保険適用になり、3000万円を超える薬価が話題になりました。5年前、免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」も同じく3000万円を超える薬価が、財政を圧迫するのではないかといわれ、ルールを改定してまで、数回の値下げが行われたのも、記憶に新しいところです。そして、今年になってキムリアに続き、イエスカルタとブレヤンジが保険適用になりました。いずれもキムリアと同等の薬価です。こうした製品の登場が財政を圧迫すると懸念される方は少なくないでしょう。

オプジーボは市場に応じて薬価を引き下げ

結論から述べると、現状のCAR-T製品が財政に大きな影響を与えることはないでしょう。オプジーボの時とは事情が異なります。オプジーボは、がん細胞が免疫細胞を抑制する仕組みを解除するという従来にない作用機序で、先発の競合製品がありませんでした。そして、最初に保険適用になったのは、患者の少ない悪性黒色腫が対象。比較対象のない新薬は開発費と市場規模を勘案して、薬価が決定されるので、必然的に高額になったわけです。しかし、その後、オプジーボは、患者の多い非小細胞肺がんなどに適用が拡大されました。薬価算定の根拠が大幅に変わるということで、薬価が見直されたのです。これに対して現状のCAR-Tはいずれも多少の違いはあれ、あまり患者数の多くない血液のがんに対して保険適用になっています。市場自体がいきなり大きくなることはないので、財政に与える影響は軽微と思われます。CAR-Tは患者の免疫細胞(T細胞)の遺伝子を改変し、特定のがん細胞への攻撃性を高めたものです。正常細胞に全く影響がないとはいえず、血液のがんであれば補完が出来ることが、固形がんでは困難で、固形がんへの応用はまだ課題が多いのが現実です。

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