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2020-12-01

がん患者がインフルエンザの予防接種で注意すること


新横浜かとうクリニック院長 加藤洋一

毎年冬になると流行するインフルエンザに加え、今年は新型コロナウイルスの第3波も警戒しなくてはいけません。気温が下がるにつれて、がん患者さんの体温は低下し易く、それに伴い免疫力も下がってしまいます。インフルエンザと新型コロナウイルスのW流行を心配しているがん患者さんは多いのではないでしょうか。がんを専門に治療を行っている新横浜かとうクリニックの加藤洋一先生に、がん患者さんがインフルエンザの予防接種受ける際の注意事項や新型コロナウイルス対策について詳しくお話を伺いました。

がん患者さんはインフルエンザの予防接種を受けるべきでしょうか?
多くのがん患者さんは、インフルエンザ予防接種を受けることにより、一般的なインフルエンザワクチン本来の効果である感染リスクの半減、死亡リスクの80%削減が期待出来ます。がん患者さんの中でも特にインフルエンザ予防接種を受けるべきなのは、重症化し易い糖尿病、心臓病、腎臓病の持病がある方です。

これに対して血液のがんである白血病や悪性リンパ腫の方、抗がん剤や放射線治療中の方、肝臓や腎臓に障害がある方は、予防接種による免疫が獲得出来ない可能性があります。これは個人的見解ですが、白血病、悪性リンパ腫、抗がん剤や放射線治療中の方は、自身が予防接種を受けるのではなく、同居するご家族にインフルエンザの予防接種を受けていただき、家庭内での感染対策を徹底するほうが効果的ではないでしょうか。

いずれのがん患者さんも、主治医とよく相談した上で、予防接種を受けるようにしてください。

がん患者さんがインフルエンザの予防接種を受ける際に注意することは?
インフルエンザの予防接種は、体調のよい時に受けるようにしてください。通常、接種から2週間で免疫を獲得します。免疫力が高い方は、接種後1か月の間にインフルエンザウイルスの抗体がどんどん増え、その後、6か月で徐々に減っていきます。免疫力が低い方は、接種後2週間でインフルエンザウイルスの抗体が増え、その後、徐々に低下し、3か月で効果がなくなります。

免疫力が高いか低いかは、白血球数とリンパ球数を目安として判断が可能です。白血球数が3000未満だと、予防接種の効果は期待出来ません。白血球数が4500未満であれば、3か月程度、4500以上あれば6か月程度は効果が持続します。最終的にはリンパ球数や免疫グロブリンの量なども考慮して判断するので、個々の効果が持続する期間は、主治医に聞くか、当院で検査を受けることで、詳しくわかります。

インフルエンザの予防接種の効果を最大限にするためには、接種の前後2週間、風邪や感染症(肺炎、腸炎、膀胱炎)にかからないこと、栄養バランスがとれた食事を十分にとること、散歩やランニングなど適度な運動をすること、睡眠時間をしっかり確保することなど、免疫を正常化する規則正しい生活を送ることです。免疫力が高まることで、抗体をたくさん作ることが出来ます。

この冬、新型コロナウイルスの感染はどうやって予防したらいいでしょう?
11月初旬、アメリカの製薬大手「ファイザー」とドイツのベンチャー「ビオンテック」が共同開発している新型コロナウイルスのワクチンについて、臨床試験の最終段階の暫定評価では90%以上の予防効果があったという報道がありました。日本政府とファイザー間では来年6月末までに6000万人分のワクチンを供給することで基本合意しています。新型コロナウイルスワクチンの投与が日本でも普通に受けられるようになったら、体調がよく、定期的な通院が必要ながん患者さんは、ワクチンを接種すべきでしょう。ただし、副作用が未知数なので、ある程度の安全性に関する情報が入るのを待ってください。

がん治療が必要な患者さんは、がん治療を続けるために、ウイルス感染を予防する必要があります。これに対して体調が優れない方や、通院など外出する必要が少ない方は、不要な外出や人との面会など、新型コロナウイルス感染リスクを徹底して避け、感染の疑いがあれば、すぐにPCR検査を受けて、感染予防と早期発見を徹底するべきでしょう。家族も同様に新型コロナウイルス感染予防対策を徹底してください。

もし、新型コロナウイルスに感染した場合、どうすればいいでしょうか?
本人、または家族に37・5℃以上の発熱があった場合は、すぐに都道府県の発熱者相談センターに連絡し、同居者全員の唾液によるPCR検査を受けて、新型コロナウイルスを早期発見し、隔離とともに医師による経過観察を受けましょう。

がん患者さんは、新型コロナウイルスが発症すると、重症化する可能性が高いのですが、多くの場合、主治医が感染症の専門家ではないため、発見が遅れることが懸念されます。常に自分の身体の変化に注意し無理をしないようにしましょう。新型コロナウイルスに感染すれば、治るまでの間、がん治療を中断せざるを得ないので、がんが進行したり、転移したりすることが危惧されます。これまで以上に注意を払い、この冬を乗り越えてください。

医療法人社団神樹会
新横浜かとうクリニック

院長 加藤洋一
平成20年、新横浜かとうクリニック院長。平成22年、医療法人社団神樹会理事長。平成23年、横浜市港北区港北医療センター理事・横浜市医師会代議員・神奈川県医師会代議員・横浜市外科医会学術担当理事・聖マリアンナ医科大学放射線講師。平成27年、一般社団法人横浜市港北区医師会副会長・港北医療センター副センター長。平成29年、横浜外科医会副会長。

新横浜かとうクリニック
〒 222-0033 横浜市港北区新横浜2-6-13新横浜ステーションビル8階
TEL 045-478-6180
診療時間 10:00~18:00 休診日 木曜・日曜・祝祭日
https://katoclinic.info/

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