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2020-03-16

本当にがんを狙い撃ち出来るのはNK細胞だけ

新しいがん治療が話題になると、決まって「がんを狙い撃ち」という表現が使われます。

現状のがん治療は副作用が問題
がんい限らず病気の治療においては副作用をどうやって少なくするかが問題になります。効果が高くても、副作用の弊害が大きいと、治療を継続出来ません。特にがん治療においては正常細胞に影響を及ぼさないように、がん細胞を叩けるかどうかが、新しい治療を開発する上での最大のテーマといっても過言ではありません。

実際、標準治療の基本になっている抗がん剤は、がん細胞が正常細胞の何倍もの頻度で分裂する性質に着目し、分裂している細胞のDNAを傷害します。分裂してれば正常細胞でも攻撃し、つらい副作用を招きます。また、分裂していないがん細胞は生き残り、再発や転移の原因となるのです。

がん細胞だけに存在する抗原はない
がんの新しい治療が開発され話題になると、決まって「がんを狙い撃ち」という表現が使われます。ただ、実際にはそれが実現出来ていないことが多いのが現実です。がんを狙い撃つ根拠の多くは、がん細胞がi遺伝子の変異によって特有の分子をたくさん発現しており、それを目印に作用させるということです。免疫細胞の一種であるT細胞の遺伝子を改変し、がん細胞への攻撃性を高めるCAR-T「キムリア」は、がん化したB細胞表面にあるCD19を目印に作用します。

近赤外線に反応する色素を、がん細胞に送り込んでから、光を当てて破壊する光免疫療法は、がん細胞表面にあるEGFR(上皮成長因子受容体)に結合する分子標的薬を利用します。このようにがん細胞に特異的に発現している抗原ですが、正常細胞には全く見られないというわけではありません。正常細胞にも少なからず存在します。また、全てのがん細胞に共通しているがん細胞はありません。

NK細胞を目覚めさせることが、がん征圧の鍵
がん細胞を抗原で区別出来ないのだから、化学的、物理的な手法でがんは狙い撃ちには出来ません。それが唯一可能なのはNK細胞です。「Natural Killer(生まれながらの殺し屋)」といういささか物騒な名前を持つこの細胞は、体外から侵入した異物、体内で発生した異常な細胞を、常に監視し、見つけ次第、迅速に排除します。

問題は、がん細胞は生き延びるために様々な手段で免疫細胞の働きを抑制しています。これを目覚めさせることが、唯一のがんを狙い撃つ手段になります。

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