いよいよ保険適用となったがんゲノム医療の課題
6月1日、がん遺伝子パネル検査が保険診療で受けられるようになります。
遺伝子の異常に応じて効果的な治療を絞り込む
厚生労働省は、遺伝子の異常に応じて患者に最適な治療を選択するがんゲノム医療を、6月1日から保険適用としました。がんの発症に関わる100以上の遺伝子を調べ、どの遺伝子に異常があるかを明らかにすることによって、効果の期待出来る分子標的薬などを絞り込むことが可能になります。保険適用となるのは国立がん研究センターとシスメックが開発したNCCオンコパネルと、中外製薬が扱うファウンデーションワンCDxで、いずれも費用は56万円。但し、保険適用であれば患者の負担は一部になり、さらに高額医療費制度によって実際の負担はさらに軽くなります。従来、自由診療で提供されていたがん遺伝子パネル検査が、概ね100万円以上かかっていたことを考えると、大きな前進といえます。
効果的な治療が見つかっても、保険診療で受けられない可能性が
しかし、保険診療でがん遺伝子パネル検査を受けられる患者は、かなり限定されるのが実情です。小児がんや希少がんなど標準治療が確立されていな患者、あるいはがんが進行して標準治療が出来なくなった患者などに限られます。また、効果的な分子標的薬が見つかったとしても、それが保険適用だとは限りません。費用的な問題で治療を断念せざるを得ない場合が少なくないでしょう。仮に費用面をクリアしたとしても、保険診療と未承認の治療を組み合わせるには、医療機関をかけもちするか、患者申出療養の制度、治験などを利用するしかありません。患者申出療養制度は申請がから実施まで時間がかかりますし、受けたい治療の治験が行われているかどうかは運任せです。
遺伝子の異常に応じて保険診療で治療が出来るように
がんを症状から治療する標準治療が限界を露呈する中、がんの発症原因である遺伝子からアプローチするというのは革新的なことでしょう。しかし、実際の治療においてはまだまだ課題が多いのが現実です。がんは遺伝子の異常で起こることを、正面から受け止め、保険診療で遺伝子の異常に応じて治療が出来るようにすることが求められているのではないでしょうか。