国ががんゲノム医療を推進する中、がん遺伝子パネル検査によってより効果的な治療を選択することが出来そうです。しかし、制度的には欠陥があるといわざるをえません。
遺伝子の変異がわかれば、効きそうな治療を絞り込める
国はがんゲノム医療を推進し、各地の中核拠点病院などでがん遺伝子パネル検査が実施されています。遺伝子の変異が異常な細胞を作り、それががんの原因であることが明らかになったので、その原因から治療を選択しようということです。現在の標準治療は基本的にがんを部位別に治療します。しかし、同じがんでも患者によって性質は異なり、同じ抗がん剤が効いたり効かなかったりします。近年、がん治療薬の主流となりつつある分子標的薬は、がん細胞をに特異的に発現する蛋白質を目印に作用します。どんな遺伝子の変異が起きているかを知ることで、効果の期待出来る薬を絞り込めるというわけです。
がん治療薬は部位別に保険適応になっている
しかし、問題は、現状の保険制度はがんの部位別に使える薬が決まっているということです。既に起きていることとして、HER2という蛋白質を発現しているがん細胞に作用するハーセプチンは、海外では幅広く使われていますが、国内では乳がんと胃がんにしか保険適応になっていません。保険適応でない治療を受けるには、異なる医療機関で自由診療で受けるか、患者申出療養という制度を使うしかありません。いずれにせよ、自己負担する必要があります。せっかく有効な治療が見つかったのに、費用の面で断念せざるをえないということが起こりうるでしょう。
有効な治療が見つかっても、保険診療で受けられない可能性が
各医療機関が実施しているがん遺伝子パネル検査についても、それぞれが異なるやり方でです。また、先進医療として取り組んでいるところもあれば、既に承認申請を済ませた企業もあります。足並みが揃っていないのが現実なのです。とはいえ、このがん遺伝子パネル検査については厚生労働省は近いうちに保険適応とする方針を発表しているので、遠からず保険診療で受けられるようになるでしょう。しかし、治療の選択肢を見つけることまでは保険診療で出来ても、実際の治療は保険適応でないというのは、制度上の欠陥といわざるをえません。部位別に治験を行い、エビデンスを集めて承認──このがん治療薬が保険適応になるまでの仕組み自体を変えていく必要がであるでしょう。
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