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2018-11-16

切るか切らないかはよく考えて

がんという大きな病気になると、治療だけで頭が一杯になり、その後のことまで考えが及ばないという方が少なくなりません。

小倉智昭さんはQOLの観点から膀胱を温存
先日、アナウンサーの小倉智昭さんが、膀胱がんの再発で手術を受けることになったというニュースがありました。小倉さんは一昨年に膀胱がんの手術を受け、その時は膀胱を温存したのですが、今年になって再発が明らかになっていたのです。最初に膀胱がんだと診断された際、医師は全摘を進めましたが、小倉さんはQOLを考えて、膀胱の温存を希望したのです。

外科主導の我が国では手術が優先される
手術出来るうちは手術するというのは。標準治療の基本です。再発や転移に備えて、がん細胞が散らばっていることが疑われる患部の周囲まで切除する拡大手術は、最近では比較的行われない傾向がありますが、基本的には手術の優先順位は高くなります。背景としては放射線や抗がん剤が進歩し、再発や転移を抑えられるようになったことがあります。

体の一部を失えば、必ず不都合が出る
小倉さんのような膀胱がんの場合、がんの出来た場所や進行の度合いによっては膀胱を全摘しても、腸などで代用の膀胱を作ることが出来ます。元ボクシングの世界王者・竹原慎二さんなどがそうです。しかし、竹原さんは代用の膀胱で排尿するまでには随分苦労したといい、現在でも膀胱があった頃のようには自由に排尿は出来ないといっています。食道を切れば、嚥下に障害が出る恐れはあります。胃を全摘すれば、少しずつ分けて食事をする必要があります。大腸や直腸のがんでは肛門を残せず、人工肛門になる可能性はあります。前立腺がんの手術だと後遺症として排尿や生殖機能に障害が出ることがあります。機能だけではありません。乳がんの場合、乳房を残せるかどうかは、女性にとっては大きな問題です。

手術と遜色のない選択肢はある
一度、失った体は元には戻りません。失ったらどうなるのか。手術したほうが、さらには全摘したほうが、予後の数字に差が出るのであれば、選択する理由になります。しかし、近年では標準治療の中でもいろいろな選択肢があります。例えば食道がんなら手術と放射線・抗がん剤の併用に大きな5年生存率の差はありません。大きな差がないなら、手術の後のことをよく考えて判断すべきでしょう。年齢、仕事、生活……様々な観点でどうなるかを想像してみてください。外科主導の我が国ではがんは、手術が出来る場合は、基本は手術になります。そこで自分で考えること、そして判断することを放棄したら、後で後悔するのは自分です。

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