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2017-03-27

血液のがんに対する遺伝子治療が治験開始

タカラバイオ社は自治医科大学病院などで急性リンパ性白血病患者に対して遺伝子治療の治験に入ることを発表しました。米国の複数の治験では効果を確認されているCAR遺伝子治療で、2020年の承認を目指しています。

がんに関わる遺伝子の異常を正常に
がん患者は、がん細胞の増殖を抑制させる遺伝子が、適切に機能していないか、がん細胞を発生させる遺伝子が、過剰に働いています。これに対して機能していない遺伝子を投与したり、患者から採取した遺伝子を、正常に機能するようにして戻したりするのが遺伝子治療です。まだ開発中であり、効果や安全性の検証が行われている段階ですが、次世代のがん治療として期待されています。

米国の治験では7割以上に奏効
タカラバイオ社は2017年度から自治医科大学病院などで遺伝子治療のひとつ「CAR(キメラ抗原受容体)遺伝子治療」の治験に入り、2020年度の承認を目指すことを発表しました。対象となるのは血液のがんである急性リンパ性白血病です。患者から採取したT細胞に、人為的に作った遺伝子を加え、がん細胞が持つ蛋白質を標的として認識出来るようにした上で培養し、再び体内に戻します。米国の治験ではCAR遺伝子治療は急性リンパ性白血病に対しては7割以上の患者が、がん細胞がほとんど消えるという効果が確認されています。

免疫細胞にがん細胞を認識・攻撃させる
遺伝子治療というと何かSFの世界のようなイメージがあったり、遺伝子を組み換えるちょっと恐ろしい印象があるかもしれません。しかし、このCAR遺伝子治療は樹状細胞やCTLといった免疫細胞を利用した免疫細胞療法、がんワクチン療法に近いことがおわかりでしょう。がん細胞を認識させて攻撃させるという意味では同じなのです。その意味では課題も一致します。

がん細胞の抗原を的確に提示出来るか
米国の複数の治験では効果を確認し、様々ながんへの応用も期待されているということですが、課題は自分の攻撃対象ではないがん細胞には見向きもしないT細胞に対して、的確に抗原を認識させられるかどうかになるでしょう。がん細胞は変異していきます。また、がん細胞は体外から侵入した異物ではなく、体内で生み出されたものなので、がん細胞にだけ存在して、正常細胞には存在しない抗原を提示することは、大変に難しいのです。

問題のある遺伝子治療が多いという現状
このような治験が行われる一方、独自の遺伝子治療を行っている医療機関が増えています。全てに否定的になるのはよくありませんが、正直なところ、効果が疑わしいところは少なくありません。費用は相当かかりますし、何よりも無駄な治療に時間をかけるほど愚かなことはありません。遺伝子治療は総じて開発中の治療です。関心があるのであれば理論や症例などについて徹底して質問してみてはいかがでしょうか。効果のない治療を堂々と行っているところは、患者の真剣な問いにはきちんと回答出来ないからです。

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