免疫細胞の遺伝子を改変するがん治療薬「CAR-T」は、米国では既に承認され、血液のがんでは著効を示しています。
CAR-Tは近いうちに国内でも保険適応か
近年、大きな話題になったがんの新薬といえば、本庶佑氏がノーベル賞を授与されたPD-1の研究から生まれたオプジーボ、そして免疫細胞の遺伝子を改変するという画期的な手法のCAR-Tでしょう。オプジーボはどんどん適応のがんが増えていますが、CAR-Tも米国で承認され、我が国でも治験が進められており、近いうちに多くの患者が使えるようになるでしょう。
CAR-Tで完全寛解した多くが、後に再発
遺伝子を改変したT細胞を培養し、患者の体内に戻すこの治療は、難治性の血液のがん患者の8割に効果がありました。しかし、最近になってネガティブなニュースが流れています。世界トップレベルのがん研究機関であるメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターが、CAR-Tで血液のがん治療を行った53名の患者に対して6年間に及ぶ調査を行ったところ、44名が完全寛解の状態になったのですが、26名に対してその後も調査を続けたところ、17名が再発、または死亡という結果になりました。そして、全体の53名のうち、約半数は13か月後には死亡していたのです。
がん細胞は変異して生き延びる
CAR-TではT細胞の遺伝子を改変し、がん化したB細胞表面に多く発現するCD19という蛋白質を認識して攻撃するようにします。しかし、がん細胞の手強さは自ら変異していくことです。CAR-Tに攻撃されたがん細胞は、やがてCD19を隠すようになり、その攻撃から逃れるのです。因みに血液のがんは固形がんより単純であり、抗がん剤も効きやすい性質があります。問題は再発し易いことで、これは今後も血液のがんを治療していく上での課題になるでしょう。
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