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2018-10-20

T細胞に作用するオプジーボの限界とリスク

 

免疫チェックポイント「PD-1」の研究で本庶佑氏がノーベル賞を授与され、オプジーボも再度大きな注目を集めています。しかし、オプジーボには限界やリスクもあります。

従来の抗がん剤とは仕組みが異なる
がん細胞は日々、免疫の攻撃を逃れて生き延びています。そのひとつとして免疫細胞の一種であるT細胞の表面に発現するPD-1に、がん細胞のPD-L1を結合させることで、T細胞ががん細胞が攻撃出来ないようにしてしまうのです。オプジーボはがん細胞よりも先にPD-1に結合することで、PD-L1が結合するのを防ぎ、がん細胞がT細胞の邪魔を出来ないようにしてしまうのです。従来の抗がん剤ががん細胞を直接攻撃するのに対して、オプジーボは、がん細胞が免疫にかけているブレーキを解除するように働くため、その作用機序が注目されました。患者自身の免疫でがんを退治する治療なのです。

比較的、よく効く腎臓がんで奏効率約2割
しかし、今回のノーベル賞受賞で脚光を浴びているオプジーボが、決していいこと尽くしの薬ではないと、警鐘を鳴らす意見は少なくありません。まずオプジーボは劇的に効果のある患者がいる一方、作用機序から考えて、がん細胞にPD-L1が発現していなければ、効果は期待出来ません。比較的、よく効く腎臓がんでも2割程度の奏効率といわれます。

T細胞の暴走で自己免疫疾患のリスクが
また、T細胞を使うことによるリスクもあります。T細胞はがん細胞を認識して攻撃するわけでありません。T細胞には膨大な種類があり、目の前に自分が攻撃すべき対象がいれば攻撃します。ブレーキを外してしまうことで、正常細胞まで攻撃するという自己免疫疾患のリスクがあるのです。その結果が間質性肺炎や重症筋無力症といった生死に関わる副作用です。免疫とは非常に精密な仕組みです。PD-1は、正常細胞が発現するPD-L1によって暴走を防いでいるという一面もあるのです。

薬は効果と副作用のバランスで評価すべき
以上、オプジーボがT細胞に作用することによる限界とリスクについて解説しました。どんな薬でも効果と副作用があります。薬の価値はそのバランスで判断すべきですが、患者によっては劇的な効果のあるオプジーボも、副作用やリスクとの兼ね合いで評価すべきだということです。

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