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2018-09-08

オプジーボが切り開いた免疫治療という領域

何かと大きな話題になったオプジーボですが、我が国のがん医療においては制度面から見て、大きな意味がありました。

高額と批判され、3年で3度もの値下げ
免疫チェックポイント阻害剤の第1号として保険適応になったオプジーボ。従来の抗がん剤とは異なる作用機序であり、末期がんから回復した患者も少なくなかったことで、一時は夢の新薬とまで持ち上げられました。やがて年間3500万円以上もの高額な薬価が批判の対象になり、最初に悪性黒色腫で保険適応になった3年前からこれまでの短期間に、異例の3度もの値下げが行われています。また、一昨年には副作用による死亡例が報道され、そのリスクも改めて周知されました。

オプジーボは免疫を回復させるが、範囲は限定される
実のところ、オプジーボに対して夢の新薬とまで持ち上げるのは、いささか誇張した表現であったと思います。奏効率は非小細胞肺がんで2割程度。がん治療薬としては決して低い数字ではありませんが、あれほど騒ぐようなことはなかったでしょう。また、オプジーボは低下しているがん患者の免疫を回復させるわけですが、その範囲は限定的です。免疫細胞の一種であるT細胞の表面には、免疫チェックポイントといってそこにがん細胞が働きかけることで、異物を排除する機能を抑制される部分があります。免疫チェックポイントはこの働きかけを阻害することで、T細胞ががん細胞を攻撃出来るようにします。とはいえ、T細胞はがん細胞に対する免疫の中では主役とはいえません。また、免疫チャックポイントは幾つも存在し、オプジーボががん細胞の働きかけを封じられるのは、そのうちの1種類に過ぎないのです。

免疫治療が堂々と標準治療に組み込まれた
とはいえ、オプジーボの登場が画期的であったのは、免疫を回復させるがん治療薬が保険適応となり、標準治療に組み込まれたことでしょう。従来、標準治療は手術・放射線・抗がん剤の三大療法が主流であり、がんを外から排除するというやり方ばかりでした。その結果が、がん細胞の全てを殺すことが出来ず、再発や転移を繰り返した末のがん難民です。そして、現在、将来のがん治療は免疫重視に向かっています。私たちの体内では日々、がん細胞が生まれていますが、免疫が十分に機能していれば、迅速にがん細胞を排除するので、がんという病気にはなりません。免疫が機能しない状態が続いた結果ががんであり、それならば免疫を回復させて、がん細胞を征圧しようというのが、これからのがん治療なのです。欧米では既に抗がん剤よりも免疫を刺激する分子標的薬が主流になっています。我が国でもこれまで主流ではなかった免疫治療が、堂々と標準治療に組み込まれたという点で、オプジーボの登場は意味があったといえるでしょう。

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