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2018-03-23

がん細胞だけを化学的に識別出来れば、征圧出来たに等しい

がん細胞だけを完全に狙い撃つためには、がん細胞だけを化学的に識別することが必須です。

細胞の単位で排除しないと、がんは再発・転移する
新しいがん治療について報道される際、「狙い撃ち」という表現がよく使われます。がんは細胞の病気ですから、目に見えるがんを手術で取ったり、放射線で焼いたりしても、散らばったがん細胞が残ってしまいます。これを排除する目的で、抗がん剤を使うのですが、抗がん剤はがん細胞を殺すわけではなく、分裂中の細胞のDNAをばらばらにして破壊します。がん細胞は分裂が盛んなので、これによって多くが殺傷されますが、完全に体内から消えるわけではありません。分裂中でなければ無傷で生き延びて、それが再発や転移の原因となります。抗がん剤は何クールか使ううちに、薬剤耐性が出て、効果が低下します。そして、正常細胞に与える影響で、様々な副作用が生じます。細胞の単位でいかにしてがんを狙い撃てるかどうかは、がん治療の最大のテーマなのです。

分子標的薬でもがん細胞だけに作用するわけではない
近年、欧米では抗がん剤はあまり使われなくなり、分子標的薬が主流となっています。これはがん細胞に特異的に見られる物質を標的に作用し、がん細胞の増殖を抑制する薬です。分裂中の細胞を見境なく殺す抗がん剤のような副作用はありませんが、これとてがん細胞だけを狙い撃っているわけではありません。がん細胞にのみ存在して、正常細胞には存在しない物質は、今のところは見つかっていません。完全な標的が存在しないのです。標的となる物質ががん細胞に発現していなければ効果はありません。反対に標的となる物質が正常細胞にあれば、影響は受けてしまいます。

ヒトの体内と実験の環境は大きく異なる
しかし、実験などでは「がんが消えた」「がん細胞の狙い撃ちに成功」といった話が出ます。これに関しては理由は簡単です。試験管の中やマウスの体内ではがん細胞は異物なのです。異物であれば化学的に区別することは簡単なのです。これに対して患者の体内ではがん細胞は異物ではありません。実験で簡単に出来たことが、患者の体内でも同じように出来るとは限らないのです。

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