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2022-12-28

エンハーツが欧州でHER2陽性胃がんについて適応追加


抗体薬物複合体は、抗体の仕組みを使って、既存の抗がん剤の攻撃力を効率よくがん細胞に作用させます。

交代医薬品と低分子の抗がん剤を組み合わせる

エンハーツは、抗体医薬品と低分子の抗がん剤を組み合わせて、それぞれの強みを活かした新薬です。従来の低分子の抗がん剤は、がん細胞を選んで攻撃しているわけではなく、がん細胞が正常細胞よりも頻繁に分裂する性質を利用し、分裂している細胞のDNAを障害します。がん細胞を直接攻撃しますが、分裂していないがん細胞は生き延び、分裂中であれば正常細胞も巻き添えになり、副作用を招くという欠点がありました。一方、抗体医薬品は、がん細胞の異常な増殖に関連している蛋白質に着目し、その働きを抑制することで、増殖を食い止めます。効果は穏やかですが、がん細胞に選択的に作用するので、副作用は軽微です。このふたつを組み合わせ、低分子の抗がん剤を抗体の仕組みでがん細胞に対して選択的に送り届けます。

抗体薬物複合体は、我が国が先導する分野

エンハーツは、抗HER2抗体のトラスツズマブと低分子の抗がん剤を使った抗体薬物複合体です。HER2は、進行が急速ながんに発現することが多い蛋白質です。エンハーツは既に国内ではいずれもHER2陽性の乳がん、胃がんに保険適用となっています。そして、欧州でもHER2陽性の乳がんに加えてHER2陽性の胃がんに対しても承認されることになりました。抗体薬物複合体は既存のがん治療薬を組み合わせて開発されており、純然たる新薬ではないかもしれませんが、これまで新薬の分野では遅れをとっていた我が国が先導している分野といえます。

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