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2018-02-22

CAR-Tは、がん細胞を狙い撃ち出来るわけではない

話題のCAR-T療法についてがんサイダー.infoをご覧になった方から、どんながんに対して有効なのか、副作用はどうなのかなどの問い合わせをいただきました。

米国で承認されたキムリアは、血液のがんの治療薬
米国でノバルティスのキムリアが承認され、免疫細胞の遺伝子改変という画期的な手法と5000万円を超える治療費で、 CAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法 は大きな話題になりました。遠からず我が国でも承認されるでしょう。キムリアはB細胞ががん化する血液のがんの治療薬ですが、それ以外の固形がんにも効果を期待する方は多いようです。また、免疫細胞療法の一種ということでがん細胞を狙い撃ちにして、正常細胞への影響がない(副作用が少ない)治療が実現するのではないかという期待もあるようです。

キムリアは正常なB細胞でも攻撃する
結論からいうと、キムリアはがん細胞を狙い撃ちにするわけではありません。T細胞はがん細胞を識別して攻撃するわけではなく、特定の標的があれば攻撃をすするだけです。キムリアはT細胞の遺伝子を改変して、活性を上げ、B細胞の表面にあるCD19という蛋白質を認識出来るようにします。このCD19は正常なB細胞にも存在しますから、キムリアはT細胞を正常か異常かは関係なくB細胞を攻撃するのです。遺伝子改変によって活性が上げられていますから、T細胞は攻撃を続けます。免疫に関する信号であるサイトカインが過剰に分泌される状態となり、重篤な副作用のリスクがあるのです。キムリアの治療費が高額なのは、このあたりの慎重な管理が必要なことも影響しています。

何を目印にがん細胞を攻撃するのかという課題
T細胞にがん細胞を攻撃させるには、T細胞自身ががん細胞を識別出来ない以上、がん細胞の標的を特定し、それを認識出来るようにする必要があります。しかし、がん細胞だけに特有の物質は見つかっていません。がん細胞に過剰に発現している物質はあっても、全てのがん細胞に存在しているわけではありません。また、それが正常細胞にもあれば、巻き添えとなって副作用を招くわけです。現時点ではCAR-T療法を固形がんに使うには、幾つもの課題があるということです。

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