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2018-01-29

固型がんの治療としてはまだ課題の多いCAR‐T療法

血液のがんの治療として米国でCAR-T療法が承認されました。大きな期待の寄せられる治療ですが、固形がんの治療として実用化するまでには、まだ課題が残されています。

CAR-T療法は血液のがんに対してのみ承認
患者の免疫細胞の遺伝子を改変し、体内に戻すCAR-T療法が、米国で承認されました。国内でも治験がはじまり、遠くない将来には、保険診療として受けられるでしょう。画期的ながん治療として期待を集めていますが、現時点で効果が確認され、米国で承認されているのは、血液のがんの治療としてです。肺がんや胃がん、大腸がん、乳がんなど患者の多い固型がんの治療としても海外では治験が行われていますが、承認に至るほどの効果を確認出来ていないのが現状です。

キムリアは正常なB細胞も攻撃する
米国で承認されたCAR-T療法「キムリア」は、T細胞の遺伝子を改変し、B細胞の表面にあるCD19という蛋白質を認識出来るようにします。これを目印に攻撃するようになるのですが、対象はがん化したB細胞だけではありません。正常なB細胞も含めて無差別に攻撃します。当然、患者の免疫は低下するので、そこを慎重に管理しながら行う必要があるのですが、これによってがん化したB細胞への一定の攻撃は出来るので、治療として効果は期待出来るわけです。

がん患者の体内は免疫が抑制されている
これに対して固形がんの場合、CD19のようにシンプルな標的があるわけではありません。外から標的が見えづらく、何らかの標的を認識させたCAR-Tを投与しても、十分に攻撃力を発揮出来ないのです。また、がん患者の体内は免疫が抑制されています。がん細胞の認識力を高めるだけでは、体内に投与した段階で、CAR-Tは活性が下がってしまうのです。固形がんに対してCAR-Tが効果を発揮するには、活性を上げるような遺伝子の改変を行うことなどが必要でしょう。

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