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2017-09-27

糖鎖を標的に、安価なレクチンで膵がんを狙い撃つ

膵がんといえば最も厄介ながんです。そんな膵がんに特有の糖鎖とそれを狙い撃つためのレクチンが発見されました。新薬の価格が高騰する中、効果はもちろん、そのコストにも期待が寄せられています。


抗体医薬品の開発には莫大な費用が
膵がんは発見が遅れがちで、多くのがんの中でも極めて予後がよくないことで知られています。浸潤や転移が進んだ状態で発見されることが多く、抗がん剤や分子標的薬などの化学療法が主体になりますが、決め手となる治療がないのが現状です。がんの新薬開発はがん細胞だけを狙い撃つための抗体医薬品が主流ですが、抗原となるがん細胞に特有の蛋白質はほぼ発見されつくしています。また、抗体医薬品は動物の細胞でしか生成出来ないため、開発には莫大な費用がかかり、それを回収するためには、薬価が高額になることが避けられず、オプジーボのように保険適応された段階で年間3500万円にも上ることが問題視されています。

レクチンを使うと、従来の抗体の1000倍の抗腫瘍効果が
そんな中、筑波大学と産業技術総合研究所のグループは、膵がんの幹細胞表面に多く発現する糖鎖構造とそれを特異的に認識するレクチン(糖鎖結合能力を持つ蛋白質)「rBC2LC-N」を発見しました。このレクチンを緑膿菌の外毒素と結合させたところ、細胞実験では既存の抗体を使った場合と比較して、1000倍もの抗腫瘍効果を発揮しています。レクチンは微生物によって生成出来るため、抗体医薬品よりもはるかに低コストで生産が可能です。厄介ながんである膵がん治療の新たな可能性として今後の研究の進展に期待したいところです。

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