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2017-04-24

いまだに抗がん剤中心というガラパゴス状態


オプジーボがいろいろと注目されたことで、がん克服の鍵として免疫がよく話題になります。しかし、欧米では何年も前からがん治療の主流は対症療法的な抗がん剤から免疫を重視するやり方にシフトしています。


標準治療ではがんを完全に制圧出来ない
オプジーボという薬が大きな話題となり、「夢の新薬」とまでいわれた一番の理由は、従来の抗がん剤とは全く異なる作用機序で、免疫によってがんを叩くことでしょう。これは手術・放射線・抗がん剤といった三大療法を柱とする標準治療が、がんを対象として、人為的に攻撃するのとは全く異なる考え方です。がんは腫瘍が出来た場所によって、肺がんや胃がん、大腸がんなどと診断されますが、細胞の単位の病気であり全身の病気といえます。自らの体内で生まれ、正常細胞と同じ成分で出来ているがん細胞は、正常細胞と明確に識別することが困難である以上、標準治療によって完全に排除することが出来ないのです。
 

免疫が機能していれば、がん細胞はすぐに排除される
そこで目を向けられたのが免疫です。私たちの体内では加齢やストレス、細菌やウイルス感染、喫煙や飲酒などの生活習慣、あるいは細胞分裂の際の遺伝子のコピーミスなどでがん細胞が生まれています。免疫が万全であればこうしたがん細胞はすぐに排除されてしまいます。ところが、がん細胞は様々な手段で免疫細胞を混乱させたり邪魔したりすることで生き延び、大きな腫瘍になっていきます。この働きを免疫抑制といいます。オプジーボはこの免疫抑制の一部を解除する薬です。PD-L1という蛋白質を持つがん細胞は、免疫細胞のひとつであるT細胞のPD-1に、これを結合させることで、T細胞を機能出来ないようにしてしまいます。オプジーボは先にPD-1に結合することで、この免疫抑制を防ぐのです。
 

欧米では抗がん剤よりも分子標的薬が主流
しかし、がん治療の鍵が免疫になったのは、ここ最近の話ではありません。欧米ではがんの新薬開発は分子標的薬が主流になって随分になります。分子標的薬とはがん細胞に特異的な成分に作用することで、増殖を防ぐ薬です。腫瘍が大きくなるのを食い止めて、その間に免疫の力でがんを叩くわけです。ところが、この分子標的薬は我が国では普及が進んでいません。また、保険適応が部位ごとで、海外では実績のある部位への治療には、簡単には使えないのが現状です。世界に誇れる我が国の医療ですが、がんに関してはガラパゴス状態なのです。

 
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