前回は光免疫療法への素朴な疑問のひとつ目としてがん細胞を狙い撃つための抗原について述べました。今回は光免疫療法のもうひとつの使い方、がん細胞を守る制御性T細胞の破壊についてです。
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がん細胞を守る制御性T細胞を破壊
がん細胞特有の抗原に対応する抗体と、近赤外線に反応して発熱するIR700を結合させて投与し、がん細胞に集まったところで、近赤外線を当てて、がん細胞を狙い撃ちにするのが光免疫療法の基本です。同じようにがん細胞を守っている制御性T細胞特有の抗原に反応する抗体を使って、制御性T細胞を破壊することが出来ます。
T細胞の暴走を防ぐのが、制御性T細胞本来の働き
本来は異物であるはずのがん細胞を守るというと、変に聞こえるかもしれませんが、この制御性T細胞も免疫細胞です。免疫は大変よく出来たシステムですが、微妙な均衡の上に成り立っています。T細胞は暴走すると、正常な細胞まで攻撃してしまいますが、それを防いでいるのが制御性T細胞なのです。がん細胞は免疫の監視や攻撃から逃れるため、免疫抑制といって様々な手段を行使します。そのひとつが自らの周囲にT細胞の邪魔をする制御性T細胞を集めることなのです。
T細胞はがん免疫の主役ではない
制御性T細胞という足枷がなくなることで、T細胞は本来の働きが出来るようになります。しかし、T細胞はがん免疫の主役ではないのです。T細胞といっても数多くの種類があり、タイプが違えば、目の前にがん細胞があっても攻撃はしません。制御性T細胞によるT細胞への妨害は、免疫抑制の本当に一部に過ぎないのです。話題のオプジーボもT細胞に本来の働きを回復させる薬だといえば、「夢の新薬」という表現がいささか誇張であることがおわかりでしょう。がん免疫の主役は、活性が高ければ、どんながん細胞でも見逃さず排除するNK細胞です。日々、進化しているがんの免疫治療ですが、本丸はNK細胞をいかに機能させるかになるでしょう。
光免疫療法への疑問3 効き過ぎるとかえって危険
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