Home › がんと闘う › 【がん医療考現学】がんと周辺の話題を辛口に › 治験におけるプラセボという必要悪 2016-11-11 治験におけるプラセボという必要悪 画期的な新薬を試すチャンスと思って参加したのに、実際にはその薬を擬したプラセボを投与されただけ──何人かにひとりはこんな可能性があるのが治験であることをご存知でしょうか。 薬に擬したプラセボを投与され比較対象に 新薬が製造・販売の承認を受け、さらに健康保険の適用となって、広く使われるようになるまでには、治験によってその効果が確認される必要があります。この治験は患者に対して行われるのですが、治験対象の薬の効果を明確にするために、実際にその薬を使った患者と、その薬に擬したプラセボを使った患者で、結果を比較します。もちろん、治験の間はほかの治療を受けることは出来ません。自分が実際に薬を投与されているのか、それともプラセボなのか、患者には知らされていません。もちろん、プラセボとなる可能性があることは、事前に知らされており、承諾の上で治験には参加するわけです。 科学的には必要悪、倫理的には問題あり 治験というと画期的な新薬を試すチャンスというイメージがあります。様々な部位のがんへの健康保険の適用拡大が待たれているオプジーボも、現在、治験の実施中です。とはいえ、患者の体、命はたったひとつ。一縷の望みを託して、治験に臨む患者にしてみれば、自分がプラセボの対象だとしたら、あまりに残酷なことなのは事実です。結果として治験の間に出来たはずのほかの治療の可能性も奪ってしまうことになります。このことは医学の進歩という科学的な見地からは必要悪、しかしながら倫理的には問題があると、古くから議論されてきました。多くの方はあまりご存じないでしょうが、健康と命を救う医療の進歩には、そのような現実があることをお伝えしておきたいと思います。 00 関連記事 抗体薬物複合体「エンハーツ」が小細胞肺がんへの適応追加申請を受理される 非小細胞肺がんの術前化学療法にオプジーボを併用 腫瘍溶解性ウイルスはスキルス性胃がんに有効 iPS細胞を使った免疫細胞療法が治験開始 がん免疫の主役はNK細胞であるという事実の周知徹底を オプジーボの競合「キイトルーダ」が薬価収載の申請を見送り オプジーボが血液がんの一種にも健康保険適用へ