アップル社の創業者であるスティーブ・ジョブスは、2011年に56歳の若さで世を去りました。原因は膵臓がんです。
進行がんとの闘いを左右する情報と資金
進行がんを克服する上では、情報と資金の有無が状況を大きく左右します。保険適用される標準治療だけでは進行がんは完治出来ないのですから、自由診療も含めた様々な治療の中から、自分に合った治療を見つけ出し、高額な費用を負担してでも行う必要があります。健康保険とは裕福な方だけでなく国民全てが医療を受けられるようにした制度です。いいかえれば医療費のかからない健常者が、怪我や病気で苦しんでいる方の医療費を負担しているわけですから、厳格な基準に縛られ、「標準」な治療になってしまうのは致し方ない部分があります。
情報と富の頂点にあったスティーブ・ジョブス
スティーブ・ジョブスという方がいました。企業価値世界一にまで上り詰めたアップル社の創業者にして、マッキントッシュ、アイフォーンなど世の中を変革したといっても過言ではない情報機器を生み出したクリエイターでもあります。「情報」「富」のふたつの側面で世の中の頂点にあったことはいうまでもないでしょう。そんなジョブスですが2004年頃から病気が取り沙汰され、2011年に膵臓がんで亡くなっています。
ジョブスの膵臓がんは進行が緩やかだった
ジョブスならば世界中のがん治療を調べ上げ、金に糸目をつけることなく、最高の治療を受けることは可能だったでしょう。膵臓は奥まった場所にあるので、がんの発見が遅れがちであると同時に、周囲への浸潤や転移が起こりやすいという特徴があります。そのため、見つかった時にはかなり進行しており、予後も思わしくないといわれています。病気が取り沙汰されるようになってから約7年という時間は長いのか短いのか、何ともいえないところですが、幸いなことにジョブスの場合、がんは膵臓の内分泌ホルモンを産生する細胞に出来ており、外分泌を行う膵管に出来る通常の膵臓がんより進行は緩やかだったそうです。
膵臓がんの診断後、9か月も医学的処置をしなかった
ひとつ気になるのは、ジョブスは膵臓がんと診断された後、9か月もの間、食事療法だけを行っていたという事実です。日々、口から体に入っていくものが、体を作るわけですから、食事は重要です。がんをはじめとする難病の治療において食事を重視している医師はたくさんいます。とはいえ、生死を左右するほどの重篤な病気、特にがんが、食事だけで治せるかといえば、それは難しいのではないでしょうか。残念なのは医学的な処置を行わず、症状を進行させてしまった9か月という貴重な時間です。情報、資金がどれだけあろうと、失った時間は取り戻せません。決断、対処において迅速さが不可欠なのです。