睡眠ホルモン「メラトニン」が乳がん治療を促進
メラトニンといえば質の高い睡眠をとる上で不可欠なホルモン。
メラトニンが不足すると乳がんになりやすい
メラトニンは脳の松果体から分泌され、眠気を催すことで、深い眠りへと誘い、体を休息させます。実はこのメラトニンの不足が乳がんの発症と関連していることは、過去に様々な研究や発表が行われています。メラトニンが十分に分泌されていれば、乳がんになるリスクは低下するのです。メラトニンは目覚めたら朝日を浴び、日中はしっかり活動、夜は早めに就寝するという規則的な生活で、分泌が促されます。看護師やCAなど夜勤が多い女性には乳がんが多いという説がありますが、不規則な生活リズムと関連しているのかもしれません。
乳がん患者によく使われるホルモン剤「タモキシフェン」
乳がんの治療では手術で腫瘍やその周辺を切除した後、化学療法が行われることが一般的です。その中でもよく使われるのがホルモン剤のタモキシフェン。女性ホルモン(エストロゲン)ががん細胞の受容体と結びつくと、がん細胞が成長しやすくなるため、タモキシフェンが先回りしてがん細胞と結合し、がん細胞が増えるのを防ぎます。殺細胞剤ほど強烈な副作用はありませんが、生理不順や不正出血、倦怠感、頭痛、ほてりといった更年期症状が副作用として起こります。もちろん、薬剤耐性の問題もあり、継続して使用していると、やがて効果は低くなります。
メラトニンとタモキシフェンを併用するメリット
イランの研究者グループはメラトニンを乳がん治療に活用することを考え、研究を続けてきました。その結果、タモキシフェンと併用すると、それぞれを単独で使うよりも、がん細胞を減少させる力が向上したそうです。併用であればタモキシフェンの分量を減らせますから、副作用は軽くなり、薬剤耐性が出てくるまでの時間は長くなります。メラトニンには質の高い睡眠がとれるようになる以外にも、新陳代謝や免疫を活発にするなどの働きがあります。作用の仕組みから考えれば、乳がん以外にも使えるのではないかという期待もあります。また、一部の医師はがん治療の補助として以前から患者に処方しているようです。