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2016-09-16

「がんもどき理論」の近藤誠医師の功罪

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がんの専門医でありながら、治療よりも放置することを提唱した近藤誠医師。標準治療のあり方に警鐘を鳴らし、患者の意識向上に貢献した半面、放置することが本当に患者のためなのかという批判があります。

慶應大学の医師が三大療法を批判
独自の「がんもどき」理論に基づき、がんは治療せずに放置せよと唱えている近藤誠医師。進行がん治療には手術、放射線、抗がん剤の三大療法くらいしか選択肢がないと思われていた時代、抗がん剤は効果よりも副作用のほうが大きいのではないかという疑問や批判が高まりつつある中、慶應大学の医師という権威ある肩書でそれらの三大治療を否定したことは、大きな議題となり、その著書はベストセラーになりました。

「がんもどき理論」では治療より放置
近藤医師の理論は下記のように集約出来ます。

    がんには悪性のがんと「がんもどき」がある。
    悪性のがんは治療しても治らないから放置したほうがよい。
    がんもどきは放置しても大丈夫だが、治療すると悪化することがある。

医師を「先生」と呼ぶように、医師や病院が絶対であり、患者は黙って任せておけばよいという考え方の浸透していた我が国の医療において、がんの治療においては間違ったこと、無駄なことをされていたのだという訴えは衝撃的でした。

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標準治療への警鐘
これが標準治療、特に抗がん剤一辺倒の治療への警鐘になったことは確かです。また、治療を医師や病院に全てお任せにするのではなく、患者自らが学ぶことの大切さを広めました。セカンドオピニオンの普及に繋がったともいえます。抗がん剤を使い続けた結果、徐々に効かなくなったり、使える薬がなくなってしまった患者、医師や病院からもう治療手段はないと宣告される患者を、「がん難民」と呼びますが、多くの患者はがん難民となってはじめて自ら学びはじめます。そうなってからではもう遅いのですが患者の意識が高まってきたのは、昨今の話なのです。

進行がんを放置すれば、死を待つのみ
近藤医師の大きな罪はがんを治療せず放置するように勧めてしまったことです。良性の腫瘍などで体に悪影響を及ぼさなければ、がんと共存するという生き方はありえます。また、年配の患者などで進行が遅ければ、治療で刺激することなく、残りの寿命をいかに快適に全うするかという考え方もあります。とはいえ、進行がんは治療しても仕方がないのだから放置せよというのは、生きることは諦めて全面降伏せよというに等しいのではないでしょうか。
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免疫細胞療法は進行がんに実績

がん患者は、体質も症状も行ってきた治療も様々です。治療が奏効する場合もあれば、効果が思わしくない場合もあります。放置したほうがよかったという場合もあるでしょう。しかし、進行がんに対しても有効な治療法は存在しうるのも事実。近藤医師は三大療法を否定しましたが、それ以外の治療として例えば免疫細胞療法などは進行がんに対して効果を上げている症例が数多くあります。

三大療法と免疫細胞療法の併用
進行がんにおいて治療は時間との戦いでもあります。最適な治療法を選択し、症状や体調、経済力、時間などとの兼ね合いの中で組み合わせていくことが求められます。例えば、免疫細胞にダメージを与えるため、免疫細胞療法とは真逆のように思われがちな三大療法(特に抗がん剤)ですが、これらの組み合わせは現実的なのです。腫瘍の転移や浸潤で手術が不可能な場合、まずは免疫細胞療法である程度、腫瘍を縮小させたり、転移したがん細胞を殺したりした後に手術をするということは珍しくありません。また、免疫細胞を前もって採取しておき、三大治療で大きな腫瘍をざっくりと取り去った後で、残った腫瘍や飛び散ったがん細胞による再発への対策として免疫細胞療法を行うこともあります。これならば三大治療で傷つけられる前に、比較的元気な免疫細胞を確保しておけるからです。

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