実際にがんを克服した方の肉声は、闘病中の患者にとっては心強く、そして役に立つ情報です。とはいえ、その方のがんと自分のがんは違うという認識がないと、情報に振り回されることになります。
体験に基づく情報だから価値がある
自分や家族ががんと診断されたら、多くの方は、がんがどんな病気で、どんな治療がよいのか、情報を集めると思います。以前は書籍が主な手段でしたが、インターネットが普及した現在、「がん」とその関連のキーワードで検索をすれば、膨大な情報にアクセスすることが出来ます。がん治療をテーマにしたサイトも、相当な数があるでしょう。便利な時代になったと思います。最近ではブログやSNSで誰でも手軽に情報発信が出来るようになり、がんを克服したさサバイバーや現在進行形で闘病中の患者が開設しているサイトも数多くあります。がんとの闘いは肉体的に大変であると同時に、精神的にも大変です。同じがんで苦しみ闘っている方の肉声は、貴重な情報であると同時に、共感することによって力を与えてくれます。何はともあれ、治ったという方の話は値千金なのです。著名人や専門家でなくても多くのアクセスを集めているサイトもあるようです。
誰かに効いた治療が、自分に効くとは限らない
ひとつ気になるのは、特にがんを克服したサバイバーの場合、自分の経験の裏付けがあるからか、自分の行った治療を推奨しすぎる傾向があるところです。手術や放射線、抗がん剤は絶対に駄目という方もいれば、反対にそれらの標準治療だけで大丈夫だという方もいます。特に昨今では抗がん剤の副作用など標準治療への批判が大きいので、それを推奨すると、新鮮に聞こえます。自らがんを克服したからこそ、いっていることには真実味も説得力もあります。また、同じように苦しむ方をひとりでも少なくしたいという気持ちになるのでしょう。ここで忘れてはならないのは、患者の数だけがんの種類があるということです。標準治療で全て治ったといっても、それはその患者のがんが治ったということに過ぎません。進行がんに対して標準治療だけでは限界があることは、理論的にも過去を振り返っても明らかなのです。がんの種類、腫瘍の部位、進行の具合、体力や体質……諸々の要素と治療がフィットしたということで、他の方のがんにも同じやり方が通用するとは限りません。
自分に役に立つ情報を吟味することが必要
情報は強力なツールです。がんについても数十年前とは比較にならないほどの情報が溢れています。私たちは仮にがんと診断されても、この情報を使いこなすことで、適切な治療を選択することが出来ます。とはいえ、情報を表面的にしか捉えず、いちいちそれに振り回されていては、時間も費用も体力も……治るチャンスも無駄にしてしまいかねません。情報は集めることが大事ですが、その次には吟味し取捨選択する能力が求められます。