toggle
2016-07-01

1.標準治療はどうして「標準」か?

 

f0b009b6d4ec930e6e419f7e2e810123-s

標準治療は最も広く実施され、多くの専門家が最善の治療として推奨しています。しかし、一般にあまり知られていない前提があり、それゆえの限界もあります。

最も広く行われている標準治療
標準治療はがん患者に対して最も広く行われている治療です。その柱となっているのは手術、放射線、抗がん剤(殺細胞剤)による三大療法」でがんの種類によってホルモン療法剤や分子標的薬などが使われることもあります。主に保険診療としてがん専門病院や大学病院などで誰もが平等に受けられる治療です。

標準治療は専門学会等も推奨
標準治療にはもうひとつの意味合いがあります。専門学会等が推奨している治療法だということです。様々な治療の組み合わせのうち、現状では最善の方法だと公認されているわけです。そうした合意を作るため、新しい治療法が出てくると、臨床試験を行って、従来の標準治療よりも延命効果があるというエビデンス(科学的根拠)を示します。今の標準治療より優れていると認められれば、それが新たな標準治療として条件の当てはまる患者さんに、広く実施されるようになります。

保険証臨床試験には科学的偏りが
標準治療のエビデンスとされる臨床試験のデータには、純粋に科学的に見ると偏りがあることは、広く指摘されています。従来の標準治療を土台に、新しい治療を加え、どれ
だけ延命効果があるかのデータを取るからです。例えば、新しい分子標的薬のデータを取る臨床試験では、患者さんに殺細胞剤も投与するといったことが行われます。新しいがん治療薬として注目されている分子標的薬の多くは、がん細胞の増殖を止め、その間に免疫の力でがんを克服することを意図しています。殺細胞剤を一緒に使うと、免疫細胞も殺されてしまうので、本来の薬の効果は期待出来ないことになります。理論的には疑問が残るのですが、臨床試験のルールではそういうことになっています。

標準治療の目的は延命
標準治療にはもうひとつ限界があります。これまで進行がんを確実に治せる標準治療がなかったため、従来の標準治療を改善し、効果を向上させても、その目的は結果的に延命だけになってしまうことです。標準治療がなぜ「標準」なのか。それは我が国の医療においては保険診療の範囲で受けられる治療が大前提になっているからでもあります。欧米では殺細胞剤に代わって化学療法のスタンダードになっている分子標的薬ですが、我が国の保険診療で使える分子標的薬は数えるほどしかありません。進行がんの患者さんが延命だけでなく治癒を望む場合、「標準治療+α」を検討する必要があります。

Share on Facebook0Tweet about this on Twitter0
関連記事