toggle
2016-07-01

4.抗がん剤は完治させる薬ではない

薬1抗がん剤は通常、何クールか繰り返し投与されますが、それでがん細胞が一掃されるわけではありません。治療時に分裂していないがん細胞は生き延び、やがて再発の芽になります。

抗がん剤は複製中のDNAを壊す
通常、化学療法に用いられる抗がん剤は、分裂中の細胞を殺す殺細胞剤です。正常細胞でもがん細胞でも分裂していない時は、核の中にDNA(遺伝子の鎖)を収納して、しっかり守っています。しかし、分裂して増える時だけは、複製のため、DNAが無防備になります。そこを突いて、鎖を切ってしまうと、その細胞自体が死ぬことになります。殺細胞剤は分裂中の細胞のDNAを破壊して殺す毒なのです。

正常細胞まで殺し、副作用が不可避
ここで大きくふたつの問題が生じます。ひとつは殺細胞剤が正常細胞も殺してしまうことです。殺細胞剤は、腫瘍がどんどん増殖していくのは、がん細胞の分裂が正常細胞より速いからだという仮定で作られました。しかし、がん細胞より増殖の速い正常細胞は幾つもあるのです。腸粘膜、骨髄、毛根などの細胞は分裂周期が短く、簡単に殺細胞剤の餌食になってしまいます。それが抗がん剤の副作用の正体です。

薬2分裂中でないがん細胞は殺せない
もうひとつの問題は分裂していないがん細胞は殺細胞剤を使っても死なないということです。抗がん剤は副作用から体を回復させるために、休み(休薬期間)を挟みながら、何クールも繰り返し投与されます。こうして波状攻撃をかけるのは、それまでのクールで分裂していなかったがん細胞を叩くためです。しかし、その時に分裂していなかったがん細胞は生き延びるのが道理です。中でも「がん幹細胞」と呼ばれるがんの種のような細胞は、極めて増殖が遅いことがわかってきました。抗がん剤を幾ら使っても、がんが完治に至ることはありません。

薬ではがん細胞だけを殺せない
そもそも、薬ははっきりした標的なしに対象を殺すことはできません。抗生物質に殺菌作用があるのは、異生物である細菌には自分自身(ヒト)の細胞にない構造があり、それを目標に狙い撃ちすることが出来るからです。しかし、がん細胞は元々自分の細胞だったので、がん細胞特有の構造が存在しません。がん細胞だけを狙い撃つ薬の開発は、これまで無数に繰り返されてきましたが、何を標的にしても、正常細胞は巻き添えになってしまうことがわかっています。現在、新薬開発の主流となっている分子標的薬も例外ではありません。だからこそ、がんを殺すのではなく、増殖を邪魔するように作られているのです。

Share on Facebook0Tweet about this on Twitter0
関連記事