がん細胞は免疫逃避で自らを守る
がん細胞は強い免疫抑制をかけて、我が物顔で成長していきます。さらに、免疫から身を守ったり逆襲したりする様々な手段を備えていきます。
がん細胞は免疫細胞から身を隠す
がん細胞が免疫からの攻撃を逃れる手段は様々です。がん細胞にはいろいろな個性がありますが、特に悪性度の高いがん細胞ほど免疫からの攻撃を逃れることに長けています。まず、自分ががん細胞だと見抜かれないように、身を潜める方法を学んでいます。がん細胞を殺すキラー細胞のうち、CTLは細胞表面の「MHCクラスI」という蛋白質を標的にしています。狡猾ながん細胞はMHCクラスIを引っ込めて、CTLに認識されないようにします。
NK細胞には攪乱物質を
しかし、身を潜めても、NK細胞までは騙せません。ところが、NK細胞のレーダーを撹乱しまうがん細胞がいます。NK細胞の表面にはがん細胞表面のMIC蛋白質と結合するレセプターがあります。これによって捕捉されないよう、がん細胞は自分自身からMICを切り離し、体液中にばらまいてしまうのです。NK細胞のレセプターがばらまかれたMICのほうに結合して、がん細胞本体に迫れないようにするためです。
免疫細胞とがん細胞の戦いは一対一
がん細胞と免疫細胞の闘いはイメージ的には一対一の白兵戦です。キラー細胞はがん細胞を認識すると、相手がアポトーシス(自然死)を起こすようにアプローチします。ひとつはがん細胞にグランザイムを注入する方法です。グランザイムには細胞内のカスパーゼという酵素を活性化して、DNAを切断させる作用があります。ほとんどの細胞は表面にFASというアポトーシスのスイッチ物質を持っていますが、キラー細胞のレセプターがこの物質に結合した場合も、がん細胞はアポトーシスを起こして崩壊します。
がん細胞が免疫細胞に逆襲する
悪性度の高いがん細胞はこうしたアポトーシスのメカニズムさえ無効にしている場合が多いのです。NK細胞がグランザイムを撃ち込んでも、がん細胞が自分の中のカスパーゼを不活性化していると、アポトーシスを起こしません。また、FASスイッチでは自爆しなくなったがん細胞が、逆にNK細胞やCTLのFASに結合する物質をばらまいて、逆襲してくることもあります。がん細胞は変異を繰り返して、異常な性質を獲得していきます。こうしたがんの動きを封じ込めるには、やはり免疫システムを立て直すしかないのです。